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【リンカタ】どこかの店員さん視点

2019/03/04 04:01
リーンハルト×カタシロ(男男)モブ視点
 親子だろうかと店に入ってきた二人を見て思った。仕事の上司と部下、にしては年下の男性の方があまりにも一緒に入ってきた男性に対しフランク過ぎる。会話は遠くて聞こえないが仲が良いのだろうと思う。耳打ちをするかのようなそぶりを若い方がすると、年のいっている男性がそっと背中を丸めて聞いているのが目に入る。
 若い男性の背中に時々手を添えて、恐らくは誘導しているのだろう距離感としても親子のような気がする。棚に陳列している商品を熱心に眺めているのは若い男性で、年のいった男性はと言えばその背中を見たり、自分も時々棚を見ていたりしている。そうして品定めを終えた若い子が、こちらに向かってゆったり歩いてくる。手には、見た目で判断するのは良くないのだが彼が持つには渋すぎるだろう万年筆がある。他の商品に少しだけ埋もれるようにして持ってきた。

「すいません、これ、別にできますぅ?」
「出来ますよ。…贈り物ですか?」
「まあ、そうですねえ」
「お待ちくださいね」

 ちらりと気にしている様子から内緒なのだろう。手早くレジを通してラッピングをする。自動の機械もあるが音がしてしまうからアナログだが手作業でこれも手早く済ませて先に渡すと若い子がふにゃりと笑う。

「すいません、どうも」
「いえいえ」

 他の商品を通しながら会計を済ませる間、一度だけ彼はこちらにラッピングした商品を見せ、こちらが確認して頷くとコートの内側に隠すようにしまい込む。

「おまたせしました」
「ありがとうございます」

 にこっとわらった顔は、大きな傷こそあるが優し気だった。小走りに待っているらしいもう一人の男性の下に駆け寄っていく彼を目でつい微笑ましく追って、

(あっ、あぁ……)

 いや、どうだろうか、これは憶測でしかないのだが、待っていた男性の優し気な笑みを見て、親子ではなく、まさか、と思ったが、いや、結局はお客様でそれ以上は詮索できないのだと思考をしまい込む。
 彼の嬉しそうな笑顔を思い出すと今日はよく眠れそうだ。

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