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【シリミア】君が綺麗だ

2021/07/29 08:21
シリウス×ミアプラ(男女)SSS100個書けるかな期間
「いっ、」

 声のする方へ視線をやって、あ、と声がおちた。背の低い木のあたりを屈んでみていたミアプラさんの、後ろで少し束にして結っている髪が枝に絡まって、それで引っ張られたらしかった。

「すまん、不注意だ」

 そういって、枝を切っていいかと尋ねてくれる彼女に頷けないまま、口を開けて、閉じる。

「そのままじっとしていて下さいますか」
「わかった」

 手袋を外し、彼女の前に立つ。失礼を、と一言断りをいれて、手を伸ばす。絡まった彼女の髪と枝。それを解くためとはいえ、両手で彼女の視界の両脇を占拠してしまう。腕の中というわけではないけれど、比較的近い場所にいる彼女は、小柄だ、と思う。
 うちにはイオさんくらいしか女性はいないし、同性は皆背が高い。ミアプラさんは比べてしまって申し訳ないが、女の人、だ、と何度も会うたび感じる。
 さらりとした髪をゆっくり枝から解いてとる。

「枝がダメなら私の髪くらい切っても良いのに」
「そんな、」

 黒い髪は艶やか、なわけではない。痛んではいるんだろう。ぷち、と切れるものもある。それともそういう髪の質だったりするかもしれない。わからない。わからないが、彼女の髪を切るのは、と戸惑う。

「どちらも、大事にしたいな、と思って」
「そうか?」
「……そう、ですね」

 多分、そうだ、と思う。するりとほどけた髪を手放す前に親指で撫でて、離す。

「手入れをしているわけじゃないんだがな」
「それでもなんというか、……ミアプラさんの体、の一部なので」
「そうか、ありがとう、私も貴殿がそのようになったら、そうするかもしれないな。貴殿の髪は手入れが行き届いているようだし、綺麗だからな」

 彼女の傷の多い手がそっと伸ばされて顔の横をすり抜け結っている自分の髪を掴んでするりとその手の中を滑らせ、遊ばせた。どうしてこんなにそわそわするんだろうか、と思いながら微笑むと、彼女も笑う。

「お褒め頂いて恐縮です」
「事実だ、綺麗だよ、貴殿の白い髪は」

 貴女の方が綺麗に見える、とふと思った。思ってでも、言って良いのかと躊躇う。躊躇うことに不思議だ、と自分を客観視した。言えばいいのに、と思う自分と、詰まる自分がいる。

「ミアプラさんも、」

 そこまで言葉にして、でも、それ以上が出なかった。

 出ないで、ただ、どうした、と笑う彼女に返す言葉が珍しく出てこなくて、いいえ、と返して終わった。
× × × × × × ×

まだなんかこう、言葉にするあれがこう、まだ、足りないシリウスくん

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