先ほどから視界の先に入っている青年二人がどうしても気になる。あまり気にしてしまうのも悪いかもしれない、と思いつつ、すっと視線を流してしまう。
　キャッチャーマシーンに向かっている青年を、後ろに配置されている椅子に腰かけ、腕組みをしてみている青年。ふたりとも黒い髪を短く切っているもののキャッチャーマシーンに向かっている方は前髪を上げ、座っている青年は眉にかからないほど短く切った前髪を下ろしている。
　難しい顔をして可愛いぬいぐるみを取ろうとしている青年は明るく落ち着いたくすんだオレンジ色のPコートを着ていて、座っている方はきっと革製だろう黒く艶々したジャケットを羽織っている。
　顔立ちもそっくりというより瓜二つなのだが、座っている方の青年の方がいくらか厳しい顔つきをしている気がする。

（あ…）

　すす、とキャッチャーに向かっていた青年が足を揃えてしゃがみ、両手でそっと取り出し口から抱えるほどに大きいぬいぐるみを取り出して、なにやら座っている青年と話し出す。座っている方はうんうんと何度か頷いて見せ、それから立ち上がり奥の方を指さして会話を続けている。
　その最中、オレンジのコートを羽織っている青年は近くのゲーム機の横にかけてあったゲームセンターのロゴが入った透明な景品入れの大きな袋にぬいぐるみを入れて斜めがけにして背負う。嬉しそうなのだろうなというのはその表情が変わらなくとも大事そうに背中に手を添えた所作からうかがえた。
　奥にあるのは確か音楽ゲームの筐体じゃなかったかな、とおもいながら消えていく二人を見送り、飲みかけていたジュースをちる、と啜った。