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祖父というカテゴリと歪な関係

2021/04/17 05:38
CP無しSSS100個書けるかな期間
 ラディエ・バレトア、と言えばこの宇宙では名が通り過ぎる人だ。そんな人を師のように仰ぎ、そして、養父、という立場に近くもある。実際は、彼を祖父ということで話を通しているのだけれど、彼は良くも、悪くも利己的、というか、自分のこと中心で物事を見る方だというのは短い間でもよく分かった。
 私の事などきっと興味はないだろうと思っていたのにこうして時間があれば魔術の事、星々の大きな歴史の事、様々な事柄を教えてくれる。必要ならと本さえ貸してくれるのは、どうしてなんだろうかと思いながらありがたく教えてもらっている。

「ラディエ様、お茶は飲みますか」
「おや、じゃあ下さい」

 外ではお爺様、と呼ぶ癖をつけているけど、仲間なのだから名前でいいよ、と船員の皆さまに言われて、バレトア様と呼ぶのをやめて暫く経つ。彼は呼ばれ方もどうでもいいらしい。私がお茶を淹れるのが下手でも、何も言わずに口をつけてくれる。

「そこの棚に劇薬が入ってるんですよ、」
「そう、なんですか」
「ええ。教えておきますね、いつでも僕を殺したくなったら使えるように」
「……その」

 ただ、いつもこうだ。何かと毒があるだとか、剣が置いてるだとか教えてくれる。もう知っていても教えるのは、多分頭に刷り込ませるためなんだなと思う。

「殺したりしません、ラディエ様は師なんです」
「師匠殺しも一興ですよ」
「しません」
「そうですか、残念」
「もしそういう気になっても、勝てる気もしませんし、大人しく殺される方だとも、思いませんよ」

 そう言い返すと、彼は目を細めて唇を歪ませる。綺麗に笑みをつくるのにどこか歪に見えるのは彼の持つ狂気性だろうかなんてつい思ってしまって、いけない、と思考を消す。

「そうですねえ、黙って殺されてはやりませんね」
「返り討ちにあっておしまいです、そんなことで人生を終えたくありません」
「賢明な判断です。君はそのまま君の思うように生きればいい」

 くっく、と笑う彼に、今日も彼が好きだという茶葉を選び、紅茶を淹れた。
× × × × × × ×
過激な爺さんにつきあうイニャスさんはすげー苦労してるだろうなって思うけど彼だから務まっているともいう

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