SSS倉庫

手がかかる方が好き

2021/04/17 05:28
CP無しSSS100個書けるかな期間
「ジャンルカ、おい、ジャンルカ」

 健やかに春の日差しのもと、デスクに突っ伏して寝ている男の背を驚かせないように本当に細やかに叩く。とんとん、と掌で叩いてから驚かせないように、ゆっくり覚醒するように声を落として呼びかけはするものの、疲れているのか、寝心地が良すぎているのか、友人はどうにも起きないらしい。

「起きな」

 再度、呼びかけてみてもすやすやと、一定のリズムで小さく上下する背中を見て、諦める。こういう状態だとジャンルカはどうやっても起きないことがある。無理に起こすのはかわいそうだと思うし、そこまでして起こす様な用事もない。単純に普段やってくるはずの場所にやってこないから心配で見に来たら、なんてことはない、気持ちよく昼寝中だっただけのことだ。
 暖かい室内とはいえ、一定の温度までしか上がらない。風邪でもひいちゃまずいと、薄めの毛布を取り出して肩にかけてやると、少しだけ動く。
 それでも起きるような気配はないから、部屋のドアへ、「用件がある方は後程」と書いてある札をかけておく。これをかけておけばまあ、よっぽど緊急でない限り部屋に入ってくる奴はいないのでジャンルカの安眠は保たれる。

「ジャンルカ」

 それでも、起こしてくれなかったのか、と聞かれた時の為に事務的に声をかけてはおく。嘘をつくことは容易いが、ジャンルカ相手にそれはしたくない。

「風邪ひいてもしらねーぞ」

 開いたままのタブを縮小して、画面から下げていく。どうせどれも急を要するわけじゃないし、日常的に、何度か見て置けばいいだけのものばかりだ。
 半分だけ、窓のカーテンを閉め、勝手に椅子を近くに持ってきて、読書を始める。どうせ俺も何の用事もない。あると言えばジャンルカと見回りくらいで、しかし起きるまではそれが出来ない。
 眠り姫のような友人が起きるまでは、しばし自分も休憩時間と決めて、休むほかない。

「相変わらず一人で背負うんだなお前さん」

 閉じた仕事のタブは、ほとんどが人に任せてもいいものなのに、プログラムによって管理もされているものもあるのに、一度は自分で見る癖がなかなか抜けないらしい。その生真面目さは非常に好きだが、もう少しだけ肩の力抜け、といってやりたい。
 こいつがどうやったら頼ってくれるか、というのは、ジャンルカだけじゃなく、レヴェンデルさんにも言えた話だ。

「まったく似た者同士で手がかかるな」
× × × × × × ×
まったくーーーおまえたちはーーってしてるけどそんな人たちが好きなレイフさん

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