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【ヤルヨル】そうする時間さえ好きだ

2021/04/17 05:16
ヤルヴァ×ヨルク(男男)SSS100個書けるかな期間
 軽く組んだ両手の指、親指で左手の人差し指の横を何度かなぞりながら、なんて言い出そうか、と考えている。もうすぐヨルクの仕事の時間が終わる。なるべく彼との時間はとりたいのだが、あまりとりすぎても彼にとっては良くない(彼が何か言われたり勘繰られたりするかもという懸念がある)。
 だから時々にしようか、と思って、時々声をかける、ようにとどめて居るのだけど、なんて声をかけて少し残って貰おうかと考えている。単純に少し一緒にいて、と言えばいいだけの話だけど、誘いの文句を考えてしまうのは彼にも少し楽しんでほしいと思ったりという感情があるからだ。

「ねえ、ヨルク」

 まあ、悩んでもしょうがなかったりする。結局はストレートに言う方が彼には伝わりやすい。

「今日はこの後、少し話が出来るかな?」

 勿論彼の都合もあるから、伺いを立てるのは大事だ。ヨルクは真面目だし、他にも仕事を受け持つこともあるみたいだから。

「……少しなら」

 ちょうどその言葉を合図に時間が来たらしい。小さく深呼吸をした彼を見て、隣に座るようにソファーを叩くと、悩んだあと、そろりと隣に腰かけてくれる。
 それが嬉しくて身を寄せると、彼はまだ緊張するらしい。ぎく、と体をこわばらせて俯く。

「キスしてもいい?」

 そっと彼の太ももに置かれた左の拳を包むように握りながら尋ねる。彼の答えは、ノー、だったのでそのまま笑って肩に頭を寄せる。

「ねえ、今度この部屋に泊っていかない?まあ、無理だと思っていってるんだけどね」
「すいません」
「良いんだ、こうして残ってくれるだけで」

 彼の左の拳を何度か掌で撫で、指に少し力を入れて、そうすると彼が拳を開いてくれるので指を絡め、手を繋ぐ。彼からの反応はないけれど、好きに握っても何も言われない。

「ヨルク、好きだよ、」

 暖かい気持ちに浸りながらそう告げると、彼が一度手に力を込めて握り返してくれる。

「わ、たしも、好きです、」

 酷く小さな声でそう返してくれる彼が可愛い、と思う。見上げた彼の顔は赤い。

「やっぱりキスしたいな」
「ダメです」
「じゃあ、今度だ」
「こ、んど、なら、はい」

 少し不器用に頷く彼が可愛いくて、やっぱりキスがしたい、とねだってしまいそうになるのを堪えて、笑うだけにした。

× × × × × × ×
実は書いてると、甘え上手なヤルヴァ殿のせいで「世間では彼が受けに見えるんじゃないだろうか」と思っています。攻めです。

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