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【ロルフとロトア】甘えん坊と甘やかし

2019/03/04 03:56
CP無し
「ふあぁ」

 確かに瞼は重いのだが頭が妙に爛々としていて「眠いのだが眠れずにいる」という状況におかれたまま、ベッドに仰向けで、何度目かの欠伸をした。

「あー、眠い」

 眠い、眠いのはたしかなのだが、体がまだ起きているという気持ちの悪い状態だった。うう、ともごつきながらコロコロと寝返りをうつがだからといって急にシュンっと眠気が全身に回るわけでもなかった。
 どうせだったらもう起きて明日の昼食の下ごしらえの一つでもするか?と思考もするが、こんなぽやぽやした頭で包丁を握るのは危険だ。何をするにも背反している身体と気持ちの状態に何もできずにいる。
 ちょっとだけ船の中でも歩くかと起き上り静かな狭い通路に顔を出す。まだラスタチカの部屋のドア、のぞき窓になっている部分から明りが漏れているのを見て、あいつまだ起きてるのかと自分の事は棚に上げてついついため息をついてしまう。シンと静まり返っている船内は、しかしまだ何人かは起きていることをドアから漏れる灯りが示していた。
 ラスタチカ、ラディエのいつもの二人に加えて、今日は珍しくリオンもまだ起きているらしかった。新しい医学書をラディエが買ったとか言っていたので、リオンに貸し出して彼が読んでいる可能性はある。夜の操縦はゆっくりとオートで進んでいるので比較的エンジンの音も静かだ。
 船長であり兄であるロルフの部屋は少し離れた奥まった場所にあるのだが、彼もまだ起きているらしかった。他の三人に声掛けするのは気が引けるものの、幼いころから知っている兄に関してはそのハードルはガンと下がる。
 そろそろと廊下を進み、兄の部屋のドアをそっとノックしてから入ると、珍しく読書などしているらしかった。

「あれ、どうしたのロトア」

 艶々と流れている髪を耳にかけながらそう静かに声をかけてくれる。

「ああ、眠れなくて、……明かりが見えたからさ」
「そおなの?……お兄ちゃんが添い寝してあげようか」

 ふふ、と笑いながらペンを置いた兄は大きく背伸びをする。

「はあーーー眠い」
「お前こそ寝たら」
「あーー…あー、うん、そのうちね」
「ラディエの爺さんならまだ起きてるし」
「うん、わかってる」

 ラスタチカも起きてるだろ、と言いながら手招きをされ、素直に扉を閉めて中へ入り近くによる。

「あー人肌」
「人で暖をとってんじゃねえよ」

 昔はよく雨をあばら家だの高架線の下なんかで過ごしながらこうして抱きしめていたなと懐かしく思う。ううん、と既に眠そうな兄がこうして子供みたいに甘えるのは、奥さんのトレニアさんか俺くらいだろうという自負がある。
 手入れをいつもしている髪をなでると、大きく深呼吸する音が聞こえ、「一緒に寝ない?」と再度眠そうな、甘えた声で言われて、しゃーねえなと背中を優しく叩いた。

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