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【ニヒファゼ】やさしさ

2020/12/31 23:19
ニヒツ×ファゼット(男男)セルフクロスオーバーSSS100個書けるかな期間
 生粋のオルニトアラ人、というのをこの場にいた殆どが見たんじゃないか、と思った。フードをとれはしないまま、それでも彼らから遠くに離れて座ったまま関わることを選ばないファゼットさんの近くに居ながらその姿を見た。あの人は、王だと言っていた。隣にいる人たちはその側近だとか従者、だったりするんだろう。
 同じようで、自分とは異なる姿を遠めに見ていると、くん、と服を引かれて振り返る。

「見たきゃもう少し近寄ってもいいんじゃねえの」

 こそり、と囁くようにファゼットさんがそう告げてくれるが、静かに首を左右へ振った。

「本、とか、読んだので、良いです。良くないから、」
「そっか、まあ、好きにしな」

 ファゼットさん自身がそれを選んだように、惑星QQの血が入っている自分が彼らに近寄ることはすまないことだ、と思っている。近くで見てみたいという感情はあるが、同時に得た知識から無遠慮に接近して良い相手でも種族でもないと思う。

「お前より翼、でかいな。やっぱ飛ぶんだろうなあれ」
「そうですね……」

 隣に座るようにファゼットさんに促されて、静かに腰かければ、小声で会話をしてくれる。ファゼットさんなりの気遣いなんだろうか。彼らの視界にファゼットさんが入って互いに嫌な空気にならぬよう、それとなく、彼を隠す。

「王様だとかいってるけど、ほんとなんだか」
「そう、ですね、本物のようには周囲の様子から思いますが、わかりませんね」

 うん、と小さくファゼットさんが頷く。疑うわけではないけれど、疑わずに済む根拠も理由もない。

「ねえとは思うが、……なんか言われたらすぐ言えよ。距離感の取り方考えねえとだからな」
「わかりました」

 むやみやたらに争うのは本意ではないし、望んでもいない。

「ファゼットさん、が、気にすることじゃないです」
「そりゃそうだけどな、気にしておかねえと喧嘩になっても面倒だろ」
「そうなんですか」
「そうだよ、俺は見た目通り貧弱なんだから」

 避けられる道は避けて行かねえと、と言いながら、ファゼットさんがそっと手を握ってくれるのがなんだか、胸がスースーするのを柔らかにする気がした。
× × × × × × ×

何でも時空……

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