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【シリミア】小さな逢瀬

2020/12/31 23:13
シリウス×ミアプラ(男女)SSS100個書けるかな期間
 ぱちん、と鋏をいれる。腰から下げた籠に入れた薔薇の本数を数え、旦那さんの部屋に置いておくにはもういいだろう、と思う。今日は少し気温が高く設定されているため少しばかり汗ばんだ額を、行儀が悪いが袖で拭い振り向いて少し思考が固まる。
 短く切られた髪、襟足だけ少し長く伸ばして、額から生えた角と顔の戦化粧が独特な姿。ミアプラさん、と、声に出すか出さないかで薔薇を見ていた彼女が顔を上げる。

「すまない、仕事の邪魔をしただろうか」
「いえ、むしろ、今気づきました。すいません。いつからいらっしゃったのか存じませんでした」
「そうか、なら良かった、と言うべきかな?」
「……セキュリティはしっかりしているので、良いと言っても差支えはないと思います。私が気付かなかっただけですから」

 ふ、と笑うミアプラさんはこちらに歩いてくる。それを見ながら、ふと、女の子に会うならきちんとしているに越したことは無いと思う、と旦那さんが言っていた事を思い出して葉や花びらなどついていないだろうかと自分の服装を確認する。

「問題ない。私はそういうことは気にならん」
「いいえ、そういうわけには。ミアプラさんも女性ですから失礼があってはいけません」

 ぱちり、とひとつ不思議そうに瞬きをしたミアプラさんは、口元へ手の甲を当てて笑ったようだった。

「ありがとう、なんともくすぐったいが心遣いに感謝するよ」
「こちらこそすいません、こんな格好で、あ、……汗をかいてしまったので、」
「わかった、貴殿が気にするなら近づかないでおこうか」
「感謝します」

 使っていた鋏を仕舞いながら、誰かに用だったんだろうかと今更思う。

「ミアプラさん、誰かに用が」
「いいや、貴殿の顔が見たくなったんだ。それだけだ」
「……そうですか、わかりました」
「急にすまなかったな、また来る。水分は摂っておいた方がいいぞ。今日は気温が高めだからな」
「はい」

 彼女が微笑むのにつられて笑うと、何故だかそわりと心が落ち着かないが、同時に心地よさもあるのが不思議だと思う。

 屋敷に戻ってそんな話をすると、ファゼットさんに呆れられた。
× × × × × × ×

まったり進んでいる‥

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