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【ヤルヨル】何度でも君へ

2020/12/24 04:01
ヤルヴァ×ヨルク(男男)SSS100個書けるかな期間
 うん、うん、と何度か、何度も小さく頷いて、小さな箱を眺めたままヤルヴァ殿は視線をその箱の中に注いでいる。何か鍛冶屋に頼んだらしかった。お勧めの鍛冶屋か装飾を行う店、と聞かれたのでラルジャンという店を紹介した。最近は店主の息子がよく店番をしていることが多いが、店主にしても息子にしても腕は確かなもので、多くの軍人が利用している小さな店だ。息子が仕事を受けるようになってからは装飾品も扱うようになっているし、どちらでも対応できるだろうと思ってだ。
 何を頼んだのかは聞いていないが、表情を見るに頼んだ通り、のものが手に入ったのだろう。にこにこと笑って、そのまま箱を閉じる。

「ありがとう、おかげで良い物を作って貰えたよ」

 その言葉に静かに目を伏せる。彼の望むものが手に入ったのなら何よりだと思う。

「喜んでくれると良いんだけどね」

 こちらを見て、ヤルヴァ殿が静かに立ち上がる。それから手に持っていた小さな箱を目の前に差し出して来たことに小さく瞬きをする。暫くそうして動けずにいると、箱を持っている彼の右手が一度、く、と持ち上げるような動きをして、まるで私へだ、と言われているかのような気持ちになる。なるが、わからないまま、固まる。

「ヨルクに」

 言葉でそう押され、そろりと箱を受け取ると、彼が笑顔を浮かべる。

「贈り物」
「……頂いてばかり、なのですが、」
「うん、贈りたいから贈っているだけなんだ。きにしないで」
「……後で、開けさせて頂きます」
「うん」

 しまう所がないな、と思いながら手に持った箱を眺めていると、ヤルヴァ殿から帰るまで俺が持っているよ、と柔らかに微笑まれた。

「よろ、しいんですか」
「うん、帰る時、ロマンチックに渡したいしね」

 ロマンチックに、と思いながら、しかしその「ロマンチックな渡し方」というのがぴんとこない。どういう風に、なんて思いながら差し出された手に箱をのせる。彼はただ笑いながら、二度も君に渡せるのが嬉しいね、という。

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小話100個かけるかなチャレンジ

穏やかな時間っていうのはいいもんなんですよね、すきなんですよね

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