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【ノニエル】思うに、夜、

2020/12/24 03:37
ノニン×エデルガルド(男女)SSS100個書けるかな期間
 外は生憎の雨だ。分厚く薄暗い空はこの時期になるといつも雨を降らせる。そろそろ雪にでもなるんじゃないだろうかという寒さを感じるが、今日はまだらしかった。ズキ、と傷が痛むのを一瞬唇を噛んで、それから深呼吸をする。しくしくと痛む傷は多く、今日はいまいち、調子が良くない、と思う。
 自堕落かもしれないが、今日は一日横になって、体を暖かくしていた方が良いと思い、立ち上がれば男が寄越した花が俯きだしている事に気づく。受取ってしまった。飾るにしたってどうしようもなく、花瓶なんてものもないので、捨てようかと思っていたカップへ挿していたが、寒さもあって枯れるんだろう、と思った。長く持つ種類の花ではあるが、それでもいつまでも元気なわけじゃない。
 カップの水を適当に取り換え、そこらへんに置こうか、と考えて、寝室に持ち運んでしまった。ぬいぐるみを座らせている椅子の近くの棚へ置く。それからベッドに腰かけて、ぼんやり、その花を眺めてしまう。
 他人から、男性から、花を貰った事なんてなかった。こんな私へ花を寄越すのは、あの男くらいだ。物語で有名な花で、幼い時分、憧れはあったものだ。最近になって流通するようにはなったが、それを、貰う事になるだなんて思わなかった。夢を見ているみたいだ、と思う。
 幼い頃に夢に見た騎士、のようにも、王子、のようにも、思えてしまって髪の毛を搔き乱してしまう。そんな馬鹿な事考えて、不相応だ、と思う。「エデルガルド・レスライン」という存在にそぐわない。そぐわないのに、嬉しい。
 この、ここの小さな寝室の世界だけは、私が捨ててきて、捨てきれなかったものを許してしまっている場所。本来ならこんなこともやめるべきなのに、と思いながらこそこそ集まっているぬいぐるみを、処分することも出来ない。
 いつまでも半端ものだ、と己を罵り、悲しくなる。悲しくなるのに、花を見て慰められてしまう。あの男なら、あるいは受け入れるだろうかと考えて、きつく目を閉じ、思考を消す。

 傷は少しだけ、痛みがひいた。

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小話100個かけるかなチャレンジ中

気になってはきてるっていうか大概な事にはなってる

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