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【リンカタ】僅かな瞬間が愛おしいと思う事

2020/11/23 03:31
リーンハルト×カタシロ(男男)
リーンハルト→カタシロさん

動かしながら整えてたやつなので色々口調が揺れてる。あとで気が向いたら直します。
× × × × × × ×

 自分の主な役割は情報収集だ。制服に袖を通すのは専らお偉いさんに会うときや、直属の上司であるカタシロ大佐へ報告に伺うときくらいで、普段は中継局になっているコロニーなどを転々としながら生活している。情報が溜まったり、早急の場合は直ぐに艦へ戻って大佐に報告をするが、それ以外は定期的に伺うだけだ。

「今日の報告は以上です」
「ご苦労だった」
「はぁい」

 カタシロ大佐と言う人は、割と、緩い人だ。緩いというのは良くない。考え方がおおらかで広い人だ、と思う。女性の上官も今多くいるが、それも噂ではカタシロ大佐が上役についてから、コテコテだった男社会を女性も上の地位に、媚びではなく実力でつけるように計らったんだとかなんだとか、というのは小耳にはさむ。
 実際、大佐と年が近くまだ現役の女性上官たちはシア大佐のおかげだから、と口にするので、真実だろう。
 実際、今もそうだ。わざと間延びした「はぁい」という返事に対しても大佐から小言を貰ったことはない。他でいうと結構、小言を食らうものだが。(そもそも内と外で口調を変えてしまうと違和感になる為敢えてこのスタンスを通している)
 他に比べれば大佐が率いているこの艦隊は比較的年齢が若い軍人が多く配属されている。大佐が、こういった育成に関して熱心であるのと危険すぎないが暇すぎるわけでもない、というエリアを頻繁に航行するのもあって、平均年齢が低い艦になっているのだろうが、そもそも大佐の周囲の同僚たちにしても似たような人柄が多い。類はなんとか、というやつだろう。片目が不自由で、しかしそれでも諜報活動の方へ配属してもらった自分を目にとめて頂いて、傍で使っていただけるということは嬉しい。
 口八丁手八丁、八方美人で諜報員としては大変宜しい、と自画自賛しているが、同時になかなか人に本気だと思われないことも承知だった。小さい頃からよく言われていたし、折角なら活用するかと思って配属を願ったところだから、それでああ悲しいななんて思う矛盾さは持ってはいない。別にそうでいいと思って全てと接している。

「リーンハルト上等兵」
「はぁい?なんでしょ」
「あまり使わないのだろうが、個室できちんと休息をとってから戻るように」
「はぁい」

 それでも、本気の相手は別だ。
 この思いが伝わってほしい、と強く思うわけじゃない。真実の言葉を見てほしいと縋るわけじゃない。よく言えば顔が広いが、悪く言えば八方美人、誰とでもフランクだが、軽薄そうな男、色男と賞賛して貰えることもあるがどこぞの貴族の女性の情夫なのではないかとも影で言われる場合もある。そんな自分の印象をよくよくわかっているから、必死になるわけじゃない。
 カタシロ大佐は当然かもしれないが、自分の事を悪く言うことはない。冗談だとしても、良い方で例えてくれる。そういう所が、まあ、とても好きだ。恋や愛に歳の差なんて、といえればいいのだろうが、あいにく、33も年が離れた男に口説かれたところで大佐は不思議そうにするのだろうし、口説くつもりだってない。そもそも、恋愛対象として見てもらえるとも思ってもいないし、そうだったらきっと奇跡だ。でもそんな奇跡がやすやすおこるわけじゃない。

「良ければ大佐もご一緒にどうです、添い寝は自信ありますよ」
「ああ、遠慮しよう、確かにお前は声は心地がいいが、そういうのは同世代にいってやれ」
「んー残念振られましたねえ」
「お前のファンに知れたら騒がれそうだな」
「そりゃあもおー、私の誘いを断るだなんてそーそーないですからね」
「そうだろうな」

 ぱさ、と新しい書類の束を目に通す。言葉にはのせないが気持ちだけはいつでも本気だ。そこだけは真摯でいよう、と決めている。当たって砕けるつもりはない。当ててみて、だめならそれでいい。内側にため込んで腐らせるよりずっといい。

「大佐くらいなものです、色男の誘いをざっぱりと切っちゃうのは」
「そうか、貴重な経験が出来ているな」
「おかげ様でぇ、経験になってます」

 ぱら、と捲られる書類の文字は特殊なインクが使用されているから、大佐にしか見えない。

「いつでも下がっていいぞ」
「はぁい、…大佐とおしゃべりしたくてつい居座っちゃいますねえ」

 ぱさ、と書類を少し雑に机に置いた大佐はこちらを不思議そうにみる。

「大佐とお喋りできるのはたのしいんで」

 ホントですよ、と付け加えるがホントにはみえないだろう。

「そうか…あー…そうであるなら、少し私も若者の流行について触れてみておくべきだろうか…」
「いーですよそんな」

 歩み寄ろうとしてくれている、その一言だけでもうれしいと思う頭をしてしまっている。それに、欲を言うなら自分にだけはやりの話題を聞いて欲しい、なんて思ってしまうが、そんな我儘は云えるわけがない。無理に流行の話題だのなんだのを大佐が学ぶよりは、そう、自分、という男に興味が湧いたときにそうしてくれれば、少しは、と。

「爺と話してもつまらんだろうに」
「つまらなかったらお喋りしようと思いません」
「……ああ、そうか、それは、そうだな、すまない」
「いえいえ、とんでもない」

 なかなかに難しいと呟く大佐を見ながら過ごす時間は、何ものにも代えがたい。

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