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【IFCP】悪い大人の毒牙
2020/11/23 03:04IFCPのSSS
ガエル×オルソ
× × × × × × ×
どうでもいいことは世の中に沢山ある。ただしそれは「自分が歩いている道の上では必要ではないこと」である場合であって、誰かにとっては必要な何かであって、本当にどうでもいいことなんて存在しない。
と、オルソは思いながら目の前に座ってタブレット端末を操作する丸眼鏡の青年を見ていた。ここのコロニーに住みだして少しばかりのころに彼を知った。
このコロニーは住んでいる人物に関して一定の情報開示をしている。名前、住んでいるコロニー番号、出身、年齢、身長、簡単なプロフィールが主で、どこまで情報を開示するかは個人に任せられていて、どの程度まで閲覧できるか、に関しては一定の地位か役職のものでないと見れない仕組みだ。
とりあえず、近所に誰が住んでいても気にはならないが、同郷がいるかどうかは気になり、検索した結果この青年、ガエルがいた。
声を掛けたのはこちらからで、反応は暫く窺っていた感じがあったが、今ではこうして彼は「仕事の一環」として家を訪ねてくるようになった。彼の仕事は翻訳がメインだ。様々な言語を我々が使っている共通語へ翻訳したり、その逆もある。本も何冊か勉強に使うためのものを出しているらしく、勉強熱心だと思う。素直に褒めたが彼はそんなことはないと一言だけ言って、終わった。
彼が長男でないことは会話の中で知った。フーリレでは長男か長女は家の事を継いで残ることが多いし、俺のような事例は珍しい。だから彼が、この年齢で、しかも俺が長男であるといったとき目を丸くしたのも気になる事じゃあない。彼が出るころには少しはもしかしたら、いや、彼の住んでいた場所ではそこまで雁字搦めのしきたりではなかったからかもしれないが、それでもあそこでの一般的な考えはそうなっている。
「ガエルはいつもあちこち歩き回って情報収集してるのか」
「ええ、まあ、今は貴方からお話を伺う事にしていますのでそんなにフィールドワークもしていません。そもそもここに住んでからは色々な出身の方が自然と集まっていますから外へ出て、実際その星域にいく、という事もないですね」
「ああ、なるほどな」
指が静かに画面をなぞったり押したりしているのを見ながらコーヒーに口をつけた。仕事、と彼はいう。表面上は。
彼が、ガエルが自分に対して特別な感情を抱いている、と確信したのはつい最近だった。何がきっかけで好かれたのかまでは…わからないが、ああ、好いてもらっているらしいとわかる行動は多かった。
目が合うとするりと逸れることが多くなったし、彼に対して手を伸ばすと少し身を引かれたりすることが多くなっていた。嫌われているのか?と最初こそ思ったが、伏せた瞼が少し震えて、こちらをちらりと見ていたり(相当気を使っていたらしく多分滅多なことじゃわからない程だったが)、少し身を寄せて画面をのぞいたときに彼が緊張したのもわかったし、そもそも嫌いだったら、彼の方から定期的に「お話を伺いに行ってもいいですか」なんて連絡が来るわけがないのだ。
話を聞きに行く、という定期的な連絡は一か月に二度か一度程度入る。恐らくこちらの迷惑にならないように、負担にならないようにとしてくれてのこの回数なのだろうな、というのも直ぐにわかる。そろそろこちらの訪ね歩いた惑星もなくなったというときに差し掛かっても彼は話が聞きたい、といったし、終になくなってじゃあまた機会があったらと言っても、彼はまだ聞きたいことがあるから、と食い下がったし。
恋愛経験が豊富なわけではないが、豊富過ぎる男と長い事お付き合いをして、別れて、その男からこの手の話は随分聞いて実体験としてではないが知識として備わってしまっている。何かにつけて理由をつけて自分に会いたいと言ってくれる子がいて可愛いといった男を思い出す。そのあと「まあ熊もその類なんだけど」と言われて「わかってるなら積極的に会いに来てほしいね」といったのも今はいい思い出だ。
「もう聞くことはないんじゃないか?」
「いえ、何度か確認すれば新しいことがあるかもしれませんし」
「まあ、それは、そうだ」
「……何度も申し訳ないとは思っているのですが、すみません」
「ああ、いいよ、それがガエルのスタイルなんだったら付き合うよ」
「ありがとうございます……」
意地の悪い質問だったか、と思ってみても彼は小さくかぶりを振って嫌な顔一つせずにそう答えた。確かに言っている内容はその通りだ。何度か同じことを繰り返して話していれば思い出すかもしれないし、無くても確実性が増すのだから無駄ではないんだろう。
「でも勝手に思い出を作って話しているかもよ」
「そこも以前の記録と比べてみて、また折を見てお話してもらえばわかることです。真偽に関しては」
「ああ、まあ、そうか、そうだな」
どうもへこたれはしないらしい。
こちらをきちんと見てからそう返した彼の目は本当にそう思っている、という顔だった。つい彼を試すような発言をしてしまうのはいけない、と思うが、どこまで本気なのかを見たい、とも思ってしまう自分は悪い大人なんだろう。
× × × × × × ×
これはね、うぶな男の子と年上のエッチなお姉さん(概念)
× × × × × × ×
どうでもいいことは世の中に沢山ある。ただしそれは「自分が歩いている道の上では必要ではないこと」である場合であって、誰かにとっては必要な何かであって、本当にどうでもいいことなんて存在しない。
と、オルソは思いながら目の前に座ってタブレット端末を操作する丸眼鏡の青年を見ていた。ここのコロニーに住みだして少しばかりのころに彼を知った。
このコロニーは住んでいる人物に関して一定の情報開示をしている。名前、住んでいるコロニー番号、出身、年齢、身長、簡単なプロフィールが主で、どこまで情報を開示するかは個人に任せられていて、どの程度まで閲覧できるか、に関しては一定の地位か役職のものでないと見れない仕組みだ。
とりあえず、近所に誰が住んでいても気にはならないが、同郷がいるかどうかは気になり、検索した結果この青年、ガエルがいた。
声を掛けたのはこちらからで、反応は暫く窺っていた感じがあったが、今ではこうして彼は「仕事の一環」として家を訪ねてくるようになった。彼の仕事は翻訳がメインだ。様々な言語を我々が使っている共通語へ翻訳したり、その逆もある。本も何冊か勉強に使うためのものを出しているらしく、勉強熱心だと思う。素直に褒めたが彼はそんなことはないと一言だけ言って、終わった。
彼が長男でないことは会話の中で知った。フーリレでは長男か長女は家の事を継いで残ることが多いし、俺のような事例は珍しい。だから彼が、この年齢で、しかも俺が長男であるといったとき目を丸くしたのも気になる事じゃあない。彼が出るころには少しはもしかしたら、いや、彼の住んでいた場所ではそこまで雁字搦めのしきたりではなかったからかもしれないが、それでもあそこでの一般的な考えはそうなっている。
「ガエルはいつもあちこち歩き回って情報収集してるのか」
「ええ、まあ、今は貴方からお話を伺う事にしていますのでそんなにフィールドワークもしていません。そもそもここに住んでからは色々な出身の方が自然と集まっていますから外へ出て、実際その星域にいく、という事もないですね」
「ああ、なるほどな」
指が静かに画面をなぞったり押したりしているのを見ながらコーヒーに口をつけた。仕事、と彼はいう。表面上は。
彼が、ガエルが自分に対して特別な感情を抱いている、と確信したのはつい最近だった。何がきっかけで好かれたのかまでは…わからないが、ああ、好いてもらっているらしいとわかる行動は多かった。
目が合うとするりと逸れることが多くなったし、彼に対して手を伸ばすと少し身を引かれたりすることが多くなっていた。嫌われているのか?と最初こそ思ったが、伏せた瞼が少し震えて、こちらをちらりと見ていたり(相当気を使っていたらしく多分滅多なことじゃわからない程だったが)、少し身を寄せて画面をのぞいたときに彼が緊張したのもわかったし、そもそも嫌いだったら、彼の方から定期的に「お話を伺いに行ってもいいですか」なんて連絡が来るわけがないのだ。
話を聞きに行く、という定期的な連絡は一か月に二度か一度程度入る。恐らくこちらの迷惑にならないように、負担にならないようにとしてくれてのこの回数なのだろうな、というのも直ぐにわかる。そろそろこちらの訪ね歩いた惑星もなくなったというときに差し掛かっても彼は話が聞きたい、といったし、終になくなってじゃあまた機会があったらと言っても、彼はまだ聞きたいことがあるから、と食い下がったし。
恋愛経験が豊富なわけではないが、豊富過ぎる男と長い事お付き合いをして、別れて、その男からこの手の話は随分聞いて実体験としてではないが知識として備わってしまっている。何かにつけて理由をつけて自分に会いたいと言ってくれる子がいて可愛いといった男を思い出す。そのあと「まあ熊もその類なんだけど」と言われて「わかってるなら積極的に会いに来てほしいね」といったのも今はいい思い出だ。
「もう聞くことはないんじゃないか?」
「いえ、何度か確認すれば新しいことがあるかもしれませんし」
「まあ、それは、そうだ」
「……何度も申し訳ないとは思っているのですが、すみません」
「ああ、いいよ、それがガエルのスタイルなんだったら付き合うよ」
「ありがとうございます……」
意地の悪い質問だったか、と思ってみても彼は小さくかぶりを振って嫌な顔一つせずにそう答えた。確かに言っている内容はその通りだ。何度か同じことを繰り返して話していれば思い出すかもしれないし、無くても確実性が増すのだから無駄ではないんだろう。
「でも勝手に思い出を作って話しているかもよ」
「そこも以前の記録と比べてみて、また折を見てお話してもらえばわかることです。真偽に関しては」
「ああ、まあ、そうか、そうだな」
どうもへこたれはしないらしい。
こちらをきちんと見てからそう返した彼の目は本当にそう思っている、という顔だった。つい彼を試すような発言をしてしまうのはいけない、と思うが、どこまで本気なのかを見たい、とも思ってしまう自分は悪い大人なんだろう。
× × × × × × ×
これはね、うぶな男の子と年上のエッチなお姉さん(概念)