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見知らぬ素直な人

2020/04/04 04:41
セルフクロスオーバー
 熱心に視線を注がれ続けている。話しかけられるわけでもない。かといってどこかへ行くわけでもない。恐らくは女性の方々、と思うのだけど、まだ向こうが声を発していないのでなんとも判断がつけられないままどのくらいたったのだろうと思いながら淹れて頂いたお茶を飲む。
 はあ、とうっとりしたような声は高い。この不思議な空間は、色々な星の声を纏わせた方が多くいる。様々な星の世界からやってきたひとたちが一堂に会している、というべきなのか、集められているのかよくはわからないけど、知らない人ばかりでないことは安心だった。
 かと言ってすべての方と言葉を交わしたわけでもない。目の前、机を挟んだ真向かいでじいっとこちらに視線を送っている誰かは、まだ話したことがない方のように思う。

「貴殿は男か?女か?むむ、まて、男かもしれないな!」

 先に声をあげたのは賑やかな声をまとっている方で、はきはきと言葉を連ね、音は楽しそうに跳ねている。

「急に失礼ですよ、パシア様…」

 もう一人の方は小さく輝く声で、とても弱い。震えているような音を声に纏わせた方のように感じ取った。
 元気のいい高い声と、控えめな声はどちらも少女のようで、仲が良さそうなそんな音をだす。

「男ですよ」
「おお!そうなのか!不躾に見てすまなかった!貴殿のように美しい男は初めてみたのだ」

 パシア、と呼ばれた声がそううきうきと話す。顔の事はよくお褒め頂くので素直にお礼を言うと、申し訳ありません、と小さな声が謝罪する。

「私はパシアという!こちらはオルキデ…フロランスの方が良いか?」
「ど、ど、どっちでも、…あ、でも、お、オルキデと申します」

 対照的な声は互いをいたわるように音を出す。仲がよろしいお二人なのだな、と改めて思ってふふ、と笑いが零れた。

「ご丁寧にありがとうございます…、ハレィンと申します」
「ハレィンか、よろしくな!しかし美しい…はあ……見とれてしまうな、近くで見てもいいか!?」
「ええ、パシアさんが嫌でなければどうぞ」
「有難い!!」
「わ、わ、パシア様…!」

 隣に腰かける為やってきた気配を感じてすぐに、覗き込むように下から見られているのを感じて微笑むしか今は出来ない。多分、瞳を見たいのだろうと思って彼女の顔があるのだろうそこへ顔を向ける。
 うっとりとしたため息のあと、何とも言えないといった深呼吸をパシアさんがして、椅子に腰かけ直した音を聞く。

「美しい、まるで夜空をその両の瞳に閉じ込めたようだ……、美しいな」
「ありがとうございます」
「いろいろな者がここには居るが、素敵なものを見た…はあ……世間というのは広いな」
「あまり、あの、男性のお顔をそんなに近くで見ては、だ、だめですよ、パシア様…」
「む!!!!そうだった!!!すまん!!!」
「いえいえ、お気になさらず」

 貴殿があまりにも美しくてつい、とはしゃぐ彼女の声に、遠くでしか聞いたことがない、主人のはしゃぐ声が少しだけ重なる。素直に言葉にして下さる人だ、とまだ知らない隣に座る彼女に親しみを覚えた。

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セルフクロスオーバー

三人とも世界軸が違うマン

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