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休暇のふたり

2020/04/04 04:40
ノニン×エデルガルド(男女)ヤルヴァ×ヨルク(男男)
「サッヴァ・ヨルク」

 声をかければ男はさっと視線をこちらに向けて視線を伏せる。それに右手を軽く上げてこたえ、近づく。最近は隣国からやってきた男の通訳と監視をしているのだが、今日はあろうことかあのノニン・シュトロムフトが代わりにしているとの話を聞いた。
 確かに、いくらサッヴァ・ヨルクが隣国の言葉を理解し話せるとは言え長く担当するのはまずいが、あの男が代打に指名されたというのも納得がいかない。いかないが、オウル・オルフェ様から直々のご指名とあればたかが軍人の私が口を挟むのは良くないだろう。

「変わりはないか」
「は、不穏な動きはありません」

 物静かにそういう男とは付き合いが長い。現状、サッヴァ・ヨルクが一番信用と信頼のおける男ではある。

「それは無論だが、…お前の事だ。めったなことではツラをあわせなくなったからな」
「…ああ…はい、レスライン殿もお変わりは」
「ああ、相変わらずだ」
「左様で」

 少しばかり気を許す様な柔らかい顔になる男は、むっすりとしている普段の顔を微笑みに変える。この男とは付き合いも長いし、戦場も共に駆けた。どういう性格かは把握しているがゆえに、こちらも自然と笑みが浮かぶ。

「食事でもゆっくりどうだ、酒でもいいが」
「よろしいんで」
「ああ、貴様が私といるのが迷惑でなければ、だがな」
「ははは…、その言葉そのままお返しいたします」

 お互い変わり者同士、余った同士でよく組むが、サッヴァ・ヨルクが他の男どもに比べて一歩も二歩も控えるせいだろう。随分と気楽な相手だと思えている。男、という性別で上からものを言わないことも彼に対して気楽と思うところかもしれない。

「どうせこんな行き遅れの女軍人などだれもどうも思わん」
「…レスライン殿が要らぬ言葉を向けられるのは、本意ではないのですが」
「平気だ、貴様こそだろう」
「私は平気ですとも」
「やせ我慢を…まあいい、貴様がそういうなら食事に行こう」

 実際はわからないが男は、何でもそうだが不平や不満はほとんど口にしない。部下が危うい時は言葉にするがそれ以外は沈黙を通して受け入れるばかりだ。それを都合よく思う者もいれば、心配する同僚や部下もそれ以上多くいるはずだが、彼はあまり気が付いていないかもしれない。

「楽しみにしております」
「ああ、私もだ。貴様と一度ゆっくり話もしたかったからな」
「ありがたく、」

 控えめな男だ。ああ、そういえば、あいつも、彼のように控えめな男だ。

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昼下がりのふたり、の相方バージョン

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