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【ホライゾンとファゼット】朝の事

2020/04/04 04:38
CP無し
 夜が明けて、陽が昇って、分厚いカーテンをそろりとあけると眩しい光が差し込む。眩しさに眼を細めながら枕元に置いたタブレットで時刻を確認して、身嗜みを一通り整える。扉を開け、私室を通り、書斎を抜け、廊下を静かに歩く。足音を立てないように歩いてしまう癖をどうにか意識して切り替えられるようにならないと、と思いながら階段を下りる。足音を立てて、と、意識して降りていれば客間に気配を感じ、そろりと覗く。
 ソファーに腰かけた小さい後ろ姿はファゼット君だ。シリウス君はまだまだ、やっと歩けそうだという頃だし、どのみち彼しかああして屋敷を移動する子供はいないのだけど。

「ファゼット君、おはよう」

 ぽそぽそと声をかけてみる。彼は寝入っている時もあるから、遠目では判断がまだつけられない。

「おはよう」

 少しだけ振り返った彼がそう小さく声を零す。

「読書中だった?」

 彼は本を読むのが好きらしい。ゲームも少し最近はするけれど、好きに読んでいいよ、と言ってからは読書の時間の方が多いと思う。

「斜め読みしてただけ」
「そう、…朝食は?」
「………たべる」
「じゃあここで食べてしまおうか、座ってて」
「……わかった」

 動こうとする彼を制して、急いで朝食を用意する。あまり得意じゃないけどトーストでいいかな、と思いながら皿にのせて再びファゼット君がいる部屋まで向かう。

「ジャム、とか、つける?」
「ジャム………どう、かな、いや、そのままでいいや、面倒だし」
「うん、わかった、どうぞ」

 いただきます、と小さく声にして、トーストを齧る彼をみながら、おそるおそる自分も口に運ぶ。水分が抜き取られる感じがあまり得意じゃなかったりするけど、これはこれで、昔読んだ絵本で憧れた食べ物のひとつなので苦ではない。

「ジャムってすげーあるじゃん、何味が定番なんだろ」
「あ、なんだろ、ベリー系…?オレンジ系かな?」
「……興味がでたら、買う?シリウスとも食べれるようになったあたりならいいんじゃねえの」
「そうだねえ」

 お互いに、あまり味覚がうまく機能してない。元々種族的にな自分と比べ、ファゼット君はいろんな事情があって、のことだけど、それでもここに来たばかりのときより沢山好き嫌いが出てきたので、良い傾向と思っている。最近は気が向くと、焼くとか、お湯で溶かして飲むインスタントのスープくらいは自分でやってるときもあるらしい。

「あ、そうだ、インスタント、飲み切ったから…」
「追加で頼んでおこう。気に入った?」
「……別のがいいかな、色々、飲んでみる、から」
「わかった、じゃあ詰め合わせとかにしようかな」

 うん、それがいい、と素直に頷くようになってくれた彼に、朝から嬉しい気持ちになる。

「色々試してみようね、色々、」
「あんたもな」

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