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【ショウイオ】こどもだからいいや
2020/04/04 04:36CP雑多
「お、お、お姉ちゃん、こ、こんにちわ」
恐々とかけられた声に足を止めて振り返ると、買い物の帰りなのだろう、籠の中にたくさんの品物をいれた彼がそこにいた。
「こんにちわ、ショウキ君。あと、君の方が年上なんだから、いいんだけど」
「ぁ、ぁ、の、う、うん、うん」
同じ商人に買われ、同じ場で売られていた同士、怯える彼と一言二言話しただけ。それだけだが、彼は私に勇気をもらったから、と見かけるたびに挨拶をしてくれる。くすんだような色合いの緑色の髪は襟足だけ長く伸ばされて、てろりと後ろに流れている。
「ショウキくんはお買い物?」
「う、うん!そう、なの」
「そーなんだ」
うん、と頷く彼を見て、何かまだ話した方がいいのかな、と考える。でもあまり話題もないしな、と思うとこれ以上会話しても意味がない気もする。
「引き留めて、ご、ごめんね、イ、イオ、さん」
「ううん、いいの、いつも挨拶してくれてありがとう」
うん、と頷く彼は目に見えて真っ赤で、私の事が大好きだ、といっていたのが思い出される。彼の好意は、すぐその顔に出てしまう。好きな子が出来たら大変そうだなあと思うけど、彼の好きな子って、私なのだっけ、とも思う。
「おにーちゃんって誰か好きになったことある?」
帰宅してから随分と年上の義兄にそう尋ねると、銀色にも見える白の髪を揺らして振り返る。帰ってきた私に、紅茶を淹れてくれている所なのだ。
「好き、好き……ですか、そう、ですね、……」
「気になっただけ―、ないならいいや」
「すいません、お役に立てず」
「ううん、いいの」
物静かに音を流す義兄はもういちど、すいません、と言葉を述べる。律儀で真面目な人だから、今の短時間で色々と巡らせて思考してくれていたことは想像しやすい。ファゼットおじさんがいうには兄は女っ気がないとこで育ったからそういうのがちょっとピンときてない、と、そういうことらしいのでもしかするとないのかもな、と思う。
「…旦那さんに聞いてみたらどうですか、旦那さんは、長生きですし」
「んーーー」
自分の養父のことを旦那さん、と指すところも、義兄なりに配慮しての事だ、というのも周囲のことや養父の外見を見ていれば分かった。養父であるレヴェンデルさんは寂しがっていたけれど。
「ああ、でもお父さんは好きなものが沢山あるから、イオさんの質問の答えとは違うのかも」
「そーおもう」
「ふふ、そうですか」
質問のひとつは、兄という人柄と触れ合うための会話のきっかけに過ぎない。過ぎないけれど、確かに自分の中で真摯にとらえなくてはならないこと、でもある。ショウキ君は、ジャジンという種族で、彼らの国では、伴侶を選んだり相棒を選ぶことは大切なことだ、と調べて知っている。彼はどうかは知らないが、その言葉の重大さ、それは私がここで、いいよと軽く答えてしまっていいものではない、ということも含めて、色々と考えないといけない、が。
「イオはまだこどもだからわかんないの」
背伸びをしなくてもいいんだ、と、気弱で優しい父が、あの日そう言ってくれたから、難しいことを考えるのはゆっくりでもいいや。
× × × × × × ×
いいね×会話
恐々とかけられた声に足を止めて振り返ると、買い物の帰りなのだろう、籠の中にたくさんの品物をいれた彼がそこにいた。
「こんにちわ、ショウキ君。あと、君の方が年上なんだから、いいんだけど」
「ぁ、ぁ、の、う、うん、うん」
同じ商人に買われ、同じ場で売られていた同士、怯える彼と一言二言話しただけ。それだけだが、彼は私に勇気をもらったから、と見かけるたびに挨拶をしてくれる。くすんだような色合いの緑色の髪は襟足だけ長く伸ばされて、てろりと後ろに流れている。
「ショウキくんはお買い物?」
「う、うん!そう、なの」
「そーなんだ」
うん、と頷く彼を見て、何かまだ話した方がいいのかな、と考える。でもあまり話題もないしな、と思うとこれ以上会話しても意味がない気もする。
「引き留めて、ご、ごめんね、イ、イオ、さん」
「ううん、いいの、いつも挨拶してくれてありがとう」
うん、と頷く彼は目に見えて真っ赤で、私の事が大好きだ、といっていたのが思い出される。彼の好意は、すぐその顔に出てしまう。好きな子が出来たら大変そうだなあと思うけど、彼の好きな子って、私なのだっけ、とも思う。
「おにーちゃんって誰か好きになったことある?」
帰宅してから随分と年上の義兄にそう尋ねると、銀色にも見える白の髪を揺らして振り返る。帰ってきた私に、紅茶を淹れてくれている所なのだ。
「好き、好き……ですか、そう、ですね、……」
「気になっただけ―、ないならいいや」
「すいません、お役に立てず」
「ううん、いいの」
物静かに音を流す義兄はもういちど、すいません、と言葉を述べる。律儀で真面目な人だから、今の短時間で色々と巡らせて思考してくれていたことは想像しやすい。ファゼットおじさんがいうには兄は女っ気がないとこで育ったからそういうのがちょっとピンときてない、と、そういうことらしいのでもしかするとないのかもな、と思う。
「…旦那さんに聞いてみたらどうですか、旦那さんは、長生きですし」
「んーーー」
自分の養父のことを旦那さん、と指すところも、義兄なりに配慮しての事だ、というのも周囲のことや養父の外見を見ていれば分かった。養父であるレヴェンデルさんは寂しがっていたけれど。
「ああ、でもお父さんは好きなものが沢山あるから、イオさんの質問の答えとは違うのかも」
「そーおもう」
「ふふ、そうですか」
質問のひとつは、兄という人柄と触れ合うための会話のきっかけに過ぎない。過ぎないけれど、確かに自分の中で真摯にとらえなくてはならないこと、でもある。ショウキ君は、ジャジンという種族で、彼らの国では、伴侶を選んだり相棒を選ぶことは大切なことだ、と調べて知っている。彼はどうかは知らないが、その言葉の重大さ、それは私がここで、いいよと軽く答えてしまっていいものではない、ということも含めて、色々と考えないといけない、が。
「イオはまだこどもだからわかんないの」
背伸びをしなくてもいいんだ、と、気弱で優しい父が、あの日そう言ってくれたから、難しいことを考えるのはゆっくりでもいいや。
× × × × × × ×
いいね×会話