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【ハレィン】優しい主人の事を知るに、
2020/04/04 04:34CP無し
こつこつと静かな足音が階段を下りてくる。ぴたりとそれが階段の中頃で止まり、暫く悩むように足が擦れ、再び降りてくるのを、階段下で待っていた。
「こんばんわ、ハレィン君」
「レヴェンデル様、こんばんわ」
高い音の声と調子は冷静で、冷たくも聞こえるものだが、声の持ち主はとても優しい音を出す。あまりお部屋から出てこない主人が出てきた気配と、居合わせることが出来た偶然についつい笑顔になってしまう。随分と直接話をしていない。
「お久しぶりです」
「……そう、だね、こうして直接は久しいね。…同じ屋敷に居るのだけど」
「レヴェンデル様が多忙なのは存じておりますから」
「………う、ん、ありがとう、理解があって助かる」
手すりを指の腹で撫でる微かな音が聞こえる。
レヴェンデル様が、本当はもう少し柔らかな方だというのも、知ってはいるけど、何か理由があって頑なに、こういう態度でいらっしゃるのだろうな、と思う。恥ずかしい、以外で。
「お声が聴けて嬉しく思います」
「そうかな、…君の声ほど聴き心地は良くないと思うが」
「……有難いお言葉を、」
顔は良いのに喋ると声がな、と、商人にも、故郷でも言われていた、コンプレックスの声を、レヴェンデル様は素敵だと仰って下さる。レヴェンデル様も、高い声音がコンプレックスなのだ、と教えてくれた。確かに、ファゼットさんやシリウスさんと比べれば随分と高い音を出す。
「まだお仕事ですか?」
「いや、今日は、……もう、寝ようかと思って」
「………そうなんですか、……レヴェンデル様、あの」
「何かな」
人によっては、すごく嫌がる事をお願いする。少し緊張しながらも知りたいという一心で、正面に立っているだろう主人へ言葉を告げることを選んだ。
「お顔を触っても?」
どのような雰囲気なのか、と、それは知りたかった。眼が見えない自分は、両の手で輪郭をたどり、頭の中で描くしか手段がない。今日まで、都合やレヴェンデル様のお気持ちもあるが、自分を客人として迎えてくれた主人の顔を知らずに来た。
「………わかった」
言うなり、両手首を優しく骨ばった冷たい手が掴む。それからひたりと顔に触れさせて下さる。
「失礼いたします」
鼻筋と、耳は先がとがっていて長い種族らしい。髪の毛が少し癖があって、お鬚が蓄えられているが、整ってもいる。少し髪の質は柔らかい方なのかもしれない。
「あまりいい顔立ちじゃないが」
「いいえ、レヴェンデル様、お会いできて、こうして、お顔を知れて嬉しいです」
「そ、そう、かな、ありがとう」
「はい」
少し困惑したような気配がある。それでも嫌悪の気配がないのは、嬉しい。
「ハレィン君、引き留めたね、早く寝なさい」
夜はまだ冷えるから、とそう告げる声は変わらず優しくて、やはり笑顔が浮かんでしまう。
「はい、レヴェンデル様」
× × × × × × ×
いいね×会話(タグ)
ハレィンさんは盲目ですね、いうのわすれてた
「こんばんわ、ハレィン君」
「レヴェンデル様、こんばんわ」
高い音の声と調子は冷静で、冷たくも聞こえるものだが、声の持ち主はとても優しい音を出す。あまりお部屋から出てこない主人が出てきた気配と、居合わせることが出来た偶然についつい笑顔になってしまう。随分と直接話をしていない。
「お久しぶりです」
「……そう、だね、こうして直接は久しいね。…同じ屋敷に居るのだけど」
「レヴェンデル様が多忙なのは存じておりますから」
「………う、ん、ありがとう、理解があって助かる」
手すりを指の腹で撫でる微かな音が聞こえる。
レヴェンデル様が、本当はもう少し柔らかな方だというのも、知ってはいるけど、何か理由があって頑なに、こういう態度でいらっしゃるのだろうな、と思う。恥ずかしい、以外で。
「お声が聴けて嬉しく思います」
「そうかな、…君の声ほど聴き心地は良くないと思うが」
「……有難いお言葉を、」
顔は良いのに喋ると声がな、と、商人にも、故郷でも言われていた、コンプレックスの声を、レヴェンデル様は素敵だと仰って下さる。レヴェンデル様も、高い声音がコンプレックスなのだ、と教えてくれた。確かに、ファゼットさんやシリウスさんと比べれば随分と高い音を出す。
「まだお仕事ですか?」
「いや、今日は、……もう、寝ようかと思って」
「………そうなんですか、……レヴェンデル様、あの」
「何かな」
人によっては、すごく嫌がる事をお願いする。少し緊張しながらも知りたいという一心で、正面に立っているだろう主人へ言葉を告げることを選んだ。
「お顔を触っても?」
どのような雰囲気なのか、と、それは知りたかった。眼が見えない自分は、両の手で輪郭をたどり、頭の中で描くしか手段がない。今日まで、都合やレヴェンデル様のお気持ちもあるが、自分を客人として迎えてくれた主人の顔を知らずに来た。
「………わかった」
言うなり、両手首を優しく骨ばった冷たい手が掴む。それからひたりと顔に触れさせて下さる。
「失礼いたします」
鼻筋と、耳は先がとがっていて長い種族らしい。髪の毛が少し癖があって、お鬚が蓄えられているが、整ってもいる。少し髪の質は柔らかい方なのかもしれない。
「あまりいい顔立ちじゃないが」
「いいえ、レヴェンデル様、お会いできて、こうして、お顔を知れて嬉しいです」
「そ、そう、かな、ありがとう」
「はい」
少し困惑したような気配がある。それでも嫌悪の気配がないのは、嬉しい。
「ハレィン君、引き留めたね、早く寝なさい」
夜はまだ冷えるから、とそう告げる声は変わらず優しくて、やはり笑顔が浮かんでしまう。
「はい、レヴェンデル様」
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ハレィンさんは盲目ですね、いうのわすれてた