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【リンカタ】そう、この気持ちは身勝手な我儘

2019/03/04 02:54
リーンハルト×カタシロ(男男)
 デートと言うにはあまりにも業務的な部分が多すぎる。それでも恋人と、例え業務であったとしても、二人で街を散策する、という事が出来るのは心躍るものがあった。散策と言ってしまうのは自分がそう思ってもいいかなという我儘さがあって、客観的に見れば下見、なのだ。もっと言えば警備と偵察も兼ねていて、決してそんな甘い空気は出してはならない。
 出来るだけ軍人からかけ離れた格好として、場所が今「冬の気温設定」のコロニーでもあったのでマフラーと短く厚手の上着と着こんで待ち合わせ場所で待つ事10分。雪もちらつくのだなと降ってきた人工雪が袖につくのをぼんやりと眺めたところで気配を感じて視線を投げれば、向こうから上司であり、恋人であるカタシロ大佐がやってくる。
 襟の高いロングコートを羽織って、手荷物を軽く入れているのだろう鞄を提げ、いつも襟足のあたりで結わえている髪は今日は少しだけ、高い位置で緩く団子状に纏められている。
 やばいもっときちんとした髪型のほうがよかったかな、とだらしなく降ろしてしまった前髪を気にしてしまう。

「待たせた」
「いっ……、いや、待ってない」
「そうか」

 偵察、下見、なのでなるべく上司部下感はなくして、と意識してフランクに答えてしまう。
 そうかと笑った顔が優し気で、うわあ、デートだったらよかった、とつくづく思う。

「待っていないという割には、…積もらせているが」

 いつもと違う、革製ではなく布製だろう手袋の人差し指が前髪を少しだけ払ってくれる。はらはらと白い雪が落ちていくのが見える。

「丁度、降ってきて」
「…寒くはないか」
「いや、うん、平気」

 今一度、優し気に笑った大佐の手がそっと肩を抱くように叩いて、行くぞと小さな声がした。

 ああ、うん、うん、そう、そうだ、これは下見、偵察。

 デートだったらどれだけいいんだろう、と思ってしまうのは俺の我儘。

◆ ◆ ◆
可愛いカップル描いちゃったー様から
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