幸せの青いことり



 食が細すぎるから、というより胃が小さすぎるから、基本夕飯だけは口にいれている。

 と言うか一日一食で今のところ済んでいる。シリウスの世話はホライゾンがしているし、薬もやめたお陰で禁断症状が出て来ているから、日中は専ら、届いた大きいカウチで寝ている。意気揚々とホライゾンが趣味で注文したカウチらしい。こうして横になっていても、急に叩き起こされたり仕事が入ったと頭を掴まれることがないのは、すごく、良いな、と思う。
 こんなにでかいカウチ要らないとついいったときも、ホライゾンに大きくなっても使えるでしょ?といわれたことも、嬉しい。知り合って間もないというか、本当に俺の詳しいことも何も知る由もないだろうにあのオッサンは非常に俺を気にしてくれた。出会った時も服装に気づいて買い与えてくれたけど。

 こんなに良くしてもらって良いのかな、と思いながら少し苦しい腹を擦る。

 今日は昼食をとって終わりだったが、野菜を煮込んだ上に擂り潰したらしい、随分トロリとした食事だった。何て名前かは知らないがほぼ液体だけの食事から次のステップに来たらしい。味付けは少しだけで後は野菜だけの味だったらしい。野菜は「野菜」のひとくくりだが、いろんな種類があってひとつとってもその派生みたいな(品種というらしい)のがあるようだ。
 液体にはちかいが、水分オンリーでないぶん腹が苦しい、のと、生まれてはじめて、お腹いっぱい、と思った。
 お腹いっぱいってなんだよ、どういう状況だ、と思っていたがつまりこういうことだと思う。シリウスも今はミルク?だけどそのうち、リニュウショクというやつを食うようになるのでその練習もかねたと、ホライゾンが神妙な顔で、やっぱり緩慢とした動きでスプーンを口に運んでいた。基本植物から、生命力みたいなもんを吸いとるだけで良い種族らしく、俺と同じように恐る恐る口に入れて、うわ、だの、なんだのいってる。ホライゾンも、口にものを突っ込んで飲み込むというのが慣れないらしい。苦手なうえに食う必要がないならやめればいいのにと思うが、「家族で食卓を囲んでみたい」と言っていたことが頭をよぎる。植物から生命力を得られるならそりゃあ「食卓を囲む」なんて必要性もないのだろうなと思うし、実際俺もしたことはない。
 別に一人でも構わない、と思うが、このおっさんが、してみたい、と言ってにこにこしながら俺が食べるのを見てる姿は、なんというか、俺なんかでも誰かの願望をかなえることが出来るのかもしれない、と少し思う。いや、出来てるのかは、わからないけど。

 美味しいかどうか未だに分からないが、今日の昼食は、ずっとホライゾンが楽しそうで、ちょっとこっちも楽しかった。
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