春
朝、何事もなく戻ってきたレヴェンデル殿に、あの敵兵が忘れていった短剣を渡すと、やはり隣国のそれなりに地位がある貴族の紋章であることがわかった。
「殺さなくて正解だったな、何でいちゃもんをつけられて攻め込まれるかわからないし」
「攻め込んできても向こうは大分カツカツですけどね」
レヴェンデル殿とは思えば夜の方が頻繁に会う。夕方に起きてきているらしく、今から朝食だといってパンをひとつと飲み物を摂っているのを何度か見た。そんな程度で足りるのかはわからないが。
だからこうして朝、彼女をみるのはなかなかに新鮮なものだとぼんやりと、彼女を改めてみる。魔族のように少し先のとがった耳、斜めにきちんと切りそろえられ、左へ流している前髪、右の方は黒い羽根の様な形をした髪飾りでとめてあって、艶やかな紫色の髪は長く、腰のあたりで大きな丸い飾り石でくくっている。指も、気持ち長いのだろうか。手袋は長く二の腕あたりまである。
「なんです?マジマジ見て」
「あ、ああ、すまない、改めて見るとレヴェンデル殿は不思議な格好だと思って」
「ふふ、興味が湧きました?いいんですよ?触って見ますか?」
「い、いや、いい、いいんだ」
しなだれるようにその身体がもたれかかってくる。大きな胸が自分の胸板に押し当てられていることでその形を歪ませていて、柔らかさも布越しとはいえ伝わってくる。
彼女のようなタイプの方がまだ苦手ではないが、やはり接触は苦手だ。
「そうだ、これを届けるついでに領主さんのお屋敷に行きましょうね」
「え?」
これといいながら短剣をふらふらと左右に遊ばせるように振りながら、そう決定事項だと言わんばかりの口調につい聞き返してしまう。
「レスラインが戻ってくる前に色々口裏を合わせておかないとだめでしょう」
「そ、そういうことか」
「それに領主さまのご息女が貴方と私に興味があって、是非お話を聞きたい、とこの間熱烈に本人から口説かれまして」
「……その、あー。失礼じゃないんだろうかこんな格好で……」
「ああ別にだって、特に浮浪者や浪人の類には見えませんから平気ですよ、それじゃあいきましょうか」
「今行くのか?!」
「そうですけど?早く準備なさってくださいね、置いていきますよ」
さっさと歩いていくレヴェンデル殿を慌てて追いかける。話が急すぎる、と思ったが、彼の「レスライン」という方が戻ってきそうな都合もあるのだろうと納得もする。ひとまず彼女が渡してくれた剣をベルトに挿しこんで、比較的足が速い方の馬をセルベル殿に借り、いつぞやみたあの高台にそびえている屋敷まで駆け抜けていく。朝も早く人通りもかなり少ない街中を走るのは楽ではあったが、帰りは馬を引いて歩かないといけないだろう。
屋敷の扉の前につくと、いらっしゃいませ、と品のよさそうな初老の男性が少しだけ腰を折って頭を下げる。
「馬は私共にお任せください、午後にはレスライン様もご当主にご報告に上がられる予定でしたので」
「あら、そうですか、じゃあ任せて行きましょう、ノニンさん」
「あ、あぁ、すまない、馬を頼んだ」
あまり、そうとは見えぬような格好で振る舞っているのだが領主殿と会うのであればと襟元を締め直す。ローブを着たままは失礼かもしれないのだが、生憎向こうで着ていた服は此処では少し目立ちすぎる。
表面が平らかに整えられた石造りの床はレヴェンデルの靴音を一切響かせることがない。というより彼女が音を出さぬように歩いているのだと自分の靴音だけが鳴る静かで長い廊下を歩きながら思う。勝手知ったると言った風に進んでいく彼女の背中を追う中、働いているはずの女中や使用人の姿を一切見かけていない。
「私がここに来るときは使用人はこの廊下を使わないんですよ」
「そうなのか?」
「私、領主様の特別なお客様扱いですから」
「そ、そうか」
まっすぐ背を伸ばして歩くその姿が少し眩しい。俺は、彼女のように胸を張って歩く自信など欠片もない。
止めることが出来なかったため息をつき、しばらく歩いて着いた他より豪奢な造りの扉は、領主殿の部屋なのだろうとわかる。ノックをしたのち返事も待たずに部屋に入るレヴェンデル殿に慌ててついていくと、男性が窓の外を見ていた。薄い緑色の長い髪をうなじのあたりで、大きな黒いリボンでもって括っている。
「ギーゼラ殿!お待ちしていました!」
振り返ったその男性は、青年と言った方がいいのかもしれない。笑った顔は人目を惹くだろう。前髪をひと房も零れ落すことなくすべてきちんと後ろに撫でつけ均一に整えられた眉と、大きな瞳は睫に縁どられている。
「あら……オウル殿は?」
「父上は数日留守にしております、中央へ呼ばれまして」
「あらそうです?残念……」
「代わりに私が当主代行としております」
「そうですか、ノニンさん、紹介しますね、こちらが領主のオウル・オルフェ殿のご息女で次期領主を務める事になっていらっしゃるアメイシャ・オルフェ殿」
ご息女。と言われてつい上から下を見てしまう。どう見ても男性の恰好をなさっているのだが、俺は、てっきり「男性」と思っていたが違うらしい。
「ノニンと申します、オルフェ殿」
そうだ、確かに、俺の知る限りでもこのような格好を好む女王は居た、そうだな、と思い込みをなんとか拭おうとする。ひとまず立ったままでは彼女の目線より高くなってしまうので膝を折ると、彼女は少し困ったように立ってくれという。
「いいんですノニン殿、私はまだそのような」
「あら、いいじゃないですか練習と思えば。だいたい貴女、いつまでも腰が低いのは考え物ですよ?」
「し、しかし、ギーゼラ殿、ノニン殿は父上くらいの年に見えるのですが」
「……」
そうか、俺は彼女の父上と年が近いのかと項垂れそうになるのを堪える。
「レヴェンデル殿の仰る通り、いずれ領主になられるのなら年上の配下は多くなるかと思います、自分の事は練習だと思っていただければ」
「ですって、アメイシャ」
「ぅ、うぅ、す、すみません、徐々に慣れるようにします」
気まずそうに頬を掻きながら俯く彼女はこういう事は不慣れなのだろう。レヴェンデル殿はどちらかといえば彼女と対等な親し気な接し方をしていたが、俺は初対面だ、そんなことは出来ない。俺程度で練習台になるなら何という事はない。
「それじゃあレスラインが来る前にちゃちゃっとすり合わせをしつつアメイシャの質問に答えてあげてください、出来るだけ正直に」
「よろしく頼みます、ノニン殿」
「あ、あぁ、わ、わかったよ」
こちらです、というオルフェ殿の背中を今度は追いかけていきながら、部屋を替えることになった。といってもすぐ隣の部屋ではあったのだが、客間、というよりは小さな書斎、しかも少し壁が分厚いようでなにか秘密事やらを話すときに使うような雰囲気の部屋だ。
明かりもかなり小さく、壁は本棚で囲まれている。
「・・・レヴェンデル殿は?」
「ギーゼラ殿はレスライン殿が来たら知らせるために外にいます」
「・・・・・・あー、その、だ、いじょうぶでしょうか、その」
「え?」
大きな金色の目がぱちぱちと瞬きを繰り返して此方を見てくる。近くで顔を見れば見るほど、彼女は、可愛らしい顔立ちの、なるほど、少女だろう。
「自分は、男、です」
「ええ、見ればわかります」
澄んだ声は疑いを知らないのかもしれない。少し困ってしまう。
「・・・・・・、その、良ければ次回、こういう時はだれか一人護衛を付けた方がよろしい」
「・・・・・・ああ、なるほど、大丈夫です、ギーゼラ殿が護衛も兼ねております」
「そ、そうですか、でしたらいいんです」
「ありがとうございます、ご配慮下さったのですね」
間違いがない、とは言い切れない。なにせ男女であるかぎり当人同士に何もなくても周囲の視線もある。彼女の若さや立場、未熟さを思えば、組み敷かれてしまう可能性も大いにある。本当は同性の護衛、強い方を一人と言わず二人くらいはつけていてもいいんじゃあないかとも思うが、レヴェンデル殿と言われてしまうと彼女であれば足りるかとも思う。
「オルフェ殿は女性、ですから、勿論、その程度は気を付けて頂いても自分は一向に気にしないというか、むしろその方が安心しますので」
「わかりました、ご親切にありがとうございます」
「い、いいえ」
「あまり護衛をつけていても何か言われるかと思っておりまして…」
「念には念を入れておくほうがよろしいです、あー、自分が言うのはなんですが、男は狼といいますか、狂暴にもなりますから…」
己の理性が強くある自信はある。あるが、他の同性が自分と同じかと言えば本能に忠実な方もいるだろうし、禁欲的な方もいる、体でもって支配しようという男だって存在しないとは言えない。
「ノニン殿も狂暴であったりしますか?」
「え…?ど、どうでしょうね、…律してはおりますが・・・わかりませんよ」
「そうなんですか」
「年上だからといってもその、信用なさらないで…相手は貴方を「娘くらいだ」と思っていない場合もありますしね…生々しい話ですが、すいません」
「いえ、ありがたいです」
彼女の年齢はまだ伺ってはいないのだが、恐らくは適齢の頃、のように見える。キウムの女王と同じくらいの年頃に見えるから、18か20くらい、ではないだろうか。怖がらせはしなかったようだが、あまり女性にすべき話題でもなかったか、と反省しながら、彼女が腰かけた反対側のチェアに座ることにした。
「殺さなくて正解だったな、何でいちゃもんをつけられて攻め込まれるかわからないし」
「攻め込んできても向こうは大分カツカツですけどね」
レヴェンデル殿とは思えば夜の方が頻繁に会う。夕方に起きてきているらしく、今から朝食だといってパンをひとつと飲み物を摂っているのを何度か見た。そんな程度で足りるのかはわからないが。
だからこうして朝、彼女をみるのはなかなかに新鮮なものだとぼんやりと、彼女を改めてみる。魔族のように少し先のとがった耳、斜めにきちんと切りそろえられ、左へ流している前髪、右の方は黒い羽根の様な形をした髪飾りでとめてあって、艶やかな紫色の髪は長く、腰のあたりで大きな丸い飾り石でくくっている。指も、気持ち長いのだろうか。手袋は長く二の腕あたりまである。
「なんです?マジマジ見て」
「あ、ああ、すまない、改めて見るとレヴェンデル殿は不思議な格好だと思って」
「ふふ、興味が湧きました?いいんですよ?触って見ますか?」
「い、いや、いい、いいんだ」
しなだれるようにその身体がもたれかかってくる。大きな胸が自分の胸板に押し当てられていることでその形を歪ませていて、柔らかさも布越しとはいえ伝わってくる。
彼女のようなタイプの方がまだ苦手ではないが、やはり接触は苦手だ。
「そうだ、これを届けるついでに領主さんのお屋敷に行きましょうね」
「え?」
これといいながら短剣をふらふらと左右に遊ばせるように振りながら、そう決定事項だと言わんばかりの口調につい聞き返してしまう。
「レスラインが戻ってくる前に色々口裏を合わせておかないとだめでしょう」
「そ、そういうことか」
「それに領主さまのご息女が貴方と私に興味があって、是非お話を聞きたい、とこの間熱烈に本人から口説かれまして」
「……その、あー。失礼じゃないんだろうかこんな格好で……」
「ああ別にだって、特に浮浪者や浪人の類には見えませんから平気ですよ、それじゃあいきましょうか」
「今行くのか?!」
「そうですけど?早く準備なさってくださいね、置いていきますよ」
さっさと歩いていくレヴェンデル殿を慌てて追いかける。話が急すぎる、と思ったが、彼の「レスライン」という方が戻ってきそうな都合もあるのだろうと納得もする。ひとまず彼女が渡してくれた剣をベルトに挿しこんで、比較的足が速い方の馬をセルベル殿に借り、いつぞやみたあの高台にそびえている屋敷まで駆け抜けていく。朝も早く人通りもかなり少ない街中を走るのは楽ではあったが、帰りは馬を引いて歩かないといけないだろう。
屋敷の扉の前につくと、いらっしゃいませ、と品のよさそうな初老の男性が少しだけ腰を折って頭を下げる。
「馬は私共にお任せください、午後にはレスライン様もご当主にご報告に上がられる予定でしたので」
「あら、そうですか、じゃあ任せて行きましょう、ノニンさん」
「あ、あぁ、すまない、馬を頼んだ」
あまり、そうとは見えぬような格好で振る舞っているのだが領主殿と会うのであればと襟元を締め直す。ローブを着たままは失礼かもしれないのだが、生憎向こうで着ていた服は此処では少し目立ちすぎる。
表面が平らかに整えられた石造りの床はレヴェンデルの靴音を一切響かせることがない。というより彼女が音を出さぬように歩いているのだと自分の靴音だけが鳴る静かで長い廊下を歩きながら思う。勝手知ったると言った風に進んでいく彼女の背中を追う中、働いているはずの女中や使用人の姿を一切見かけていない。
「私がここに来るときは使用人はこの廊下を使わないんですよ」
「そうなのか?」
「私、領主様の特別なお客様扱いですから」
「そ、そうか」
まっすぐ背を伸ばして歩くその姿が少し眩しい。俺は、彼女のように胸を張って歩く自信など欠片もない。
止めることが出来なかったため息をつき、しばらく歩いて着いた他より豪奢な造りの扉は、領主殿の部屋なのだろうとわかる。ノックをしたのち返事も待たずに部屋に入るレヴェンデル殿に慌ててついていくと、男性が窓の外を見ていた。薄い緑色の長い髪をうなじのあたりで、大きな黒いリボンでもって括っている。
「ギーゼラ殿!お待ちしていました!」
振り返ったその男性は、青年と言った方がいいのかもしれない。笑った顔は人目を惹くだろう。前髪をひと房も零れ落すことなくすべてきちんと後ろに撫でつけ均一に整えられた眉と、大きな瞳は睫に縁どられている。
「あら……オウル殿は?」
「父上は数日留守にしております、中央へ呼ばれまして」
「あらそうです?残念……」
「代わりに私が当主代行としております」
「そうですか、ノニンさん、紹介しますね、こちらが領主のオウル・オルフェ殿のご息女で次期領主を務める事になっていらっしゃるアメイシャ・オルフェ殿」
ご息女。と言われてつい上から下を見てしまう。どう見ても男性の恰好をなさっているのだが、俺は、てっきり「男性」と思っていたが違うらしい。
「ノニンと申します、オルフェ殿」
そうだ、確かに、俺の知る限りでもこのような格好を好む女王は居た、そうだな、と思い込みをなんとか拭おうとする。ひとまず立ったままでは彼女の目線より高くなってしまうので膝を折ると、彼女は少し困ったように立ってくれという。
「いいんですノニン殿、私はまだそのような」
「あら、いいじゃないですか練習と思えば。だいたい貴女、いつまでも腰が低いのは考え物ですよ?」
「し、しかし、ギーゼラ殿、ノニン殿は父上くらいの年に見えるのですが」
「……」
そうか、俺は彼女の父上と年が近いのかと項垂れそうになるのを堪える。
「レヴェンデル殿の仰る通り、いずれ領主になられるのなら年上の配下は多くなるかと思います、自分の事は練習だと思っていただければ」
「ですって、アメイシャ」
「ぅ、うぅ、す、すみません、徐々に慣れるようにします」
気まずそうに頬を掻きながら俯く彼女はこういう事は不慣れなのだろう。レヴェンデル殿はどちらかといえば彼女と対等な親し気な接し方をしていたが、俺は初対面だ、そんなことは出来ない。俺程度で練習台になるなら何という事はない。
「それじゃあレスラインが来る前にちゃちゃっとすり合わせをしつつアメイシャの質問に答えてあげてください、出来るだけ正直に」
「よろしく頼みます、ノニン殿」
「あ、あぁ、わ、わかったよ」
こちらです、というオルフェ殿の背中を今度は追いかけていきながら、部屋を替えることになった。といってもすぐ隣の部屋ではあったのだが、客間、というよりは小さな書斎、しかも少し壁が分厚いようでなにか秘密事やらを話すときに使うような雰囲気の部屋だ。
明かりもかなり小さく、壁は本棚で囲まれている。
「・・・レヴェンデル殿は?」
「ギーゼラ殿はレスライン殿が来たら知らせるために外にいます」
「・・・・・・あー、その、だ、いじょうぶでしょうか、その」
「え?」
大きな金色の目がぱちぱちと瞬きを繰り返して此方を見てくる。近くで顔を見れば見るほど、彼女は、可愛らしい顔立ちの、なるほど、少女だろう。
「自分は、男、です」
「ええ、見ればわかります」
澄んだ声は疑いを知らないのかもしれない。少し困ってしまう。
「・・・・・・、その、良ければ次回、こういう時はだれか一人護衛を付けた方がよろしい」
「・・・・・・ああ、なるほど、大丈夫です、ギーゼラ殿が護衛も兼ねております」
「そ、そうですか、でしたらいいんです」
「ありがとうございます、ご配慮下さったのですね」
間違いがない、とは言い切れない。なにせ男女であるかぎり当人同士に何もなくても周囲の視線もある。彼女の若さや立場、未熟さを思えば、組み敷かれてしまう可能性も大いにある。本当は同性の護衛、強い方を一人と言わず二人くらいはつけていてもいいんじゃあないかとも思うが、レヴェンデル殿と言われてしまうと彼女であれば足りるかとも思う。
「オルフェ殿は女性、ですから、勿論、その程度は気を付けて頂いても自分は一向に気にしないというか、むしろその方が安心しますので」
「わかりました、ご親切にありがとうございます」
「い、いいえ」
「あまり護衛をつけていても何か言われるかと思っておりまして…」
「念には念を入れておくほうがよろしいです、あー、自分が言うのはなんですが、男は狼といいますか、狂暴にもなりますから…」
己の理性が強くある自信はある。あるが、他の同性が自分と同じかと言えば本能に忠実な方もいるだろうし、禁欲的な方もいる、体でもって支配しようという男だって存在しないとは言えない。
「ノニン殿も狂暴であったりしますか?」
「え…?ど、どうでしょうね、…律してはおりますが・・・わかりませんよ」
「そうなんですか」
「年上だからといってもその、信用なさらないで…相手は貴方を「娘くらいだ」と思っていない場合もありますしね…生々しい話ですが、すいません」
「いえ、ありがたいです」
彼女の年齢はまだ伺ってはいないのだが、恐らくは適齢の頃、のように見える。キウムの女王と同じくらいの年頃に見えるから、18か20くらい、ではないだろうか。怖がらせはしなかったようだが、あまり女性にすべき話題でもなかったか、と反省しながら、彼女が腰かけた反対側のチェアに座ることにした。