幸せの青いことり
所謂デザートの類いに関して、ホライゾンは通販やら店先で買ってくるのが基本的だった。普段の朝昼夕の食事に関して料理は自分でやってみるものの、そっちのジャンルはどうもまだ着手しないらしい。基礎が出来てないのにハードル高めにチャレンジできないとぶつぶつ言っていた。
目の前にあるぷるんとした赤い色のデザートをみる。やっぱり一人で食べるのには多いので、今日もホライゾンと半分だ。紅い実の果物の味らしい。赤の実って結構種類があるぞと思いつつ、スプーンの先でちょんとつつく。プル、と震える不思議なもの。ゼリーというやつらしい。
キレイに真っ二つにきったのはホライゾンだ。さすがというか、刃物の使い方はこなれてる。いや、普通に出来る事なのかもしれないが、刃物を持つ事はホライゾンからダメと言われているので持っていない。別に自傷癖があって腕を切るだとかいうモンがあるわけではないのは先に言っておく。純粋に、「まだファゼット君の筋肉量では危ないからダメだ」と言われてるだけだ。同世代の子供に比べて俺はずいぶん発育が遅いらしい。まあ、まともな食事もここにきて初めて摂っているのだから当然かもしれない。太りにくいのか相変わらずガリガリだし。
危ないから、と包丁や刃物の類は一切触らせないが、ゼリーの蓋を開けるのは一緒にやった。他にも、間食で齧る菓子類の袋を開ける、とかいうのもホライゾンが一緒になってやる。過保護なのじゃない。俺一人じゃ、袋や蓋を開けるのが難しいからあいつが後ろから手を添えて補助してくれるのだ。まあ、そんな話はどうでもいいか。
冷蔵庫から出したばかりだったゼリーをつんつんとつついていたので、冷えていただろうそれは多分もう常温だと思う。腹を壊しやすいわけじゃないが、固形、固形だがあまり噛まなくても、舌先で潰せるもの、だが固形、というその眼前の物体にスプーンを差し込めずにいた。少しだけ、恐る恐る先で削る。薄く、小さく削り取ったそれを口の中に運ぶ。全然味は伝わらないが舌先で潰せる柔らかさであることを確かめてから、徐々に大きく削って口に入れることにした。アイスとは違うなんともいえない…むにゅっとしてる、というか、なんか、そういう感覚に少し眉間にしわが寄る。ちょっと、食感に慣れない。むにゅむにゅは、苦手か?
好き嫌いを考えるということも徐々にしていこう、と言われているのでなんとか考える。好き、嫌い、苦手、まあ好き…どれかといわれると味はどうということはないが食感があまり、という感じだ。
ところでホライゾンもゼリーを食べるのは初めてだと言っていたが、どんな顔をして食べているんだろうか。