幸せの青いことり
「それではレヴェンデル、明日の夕方まで息子を頼むぞ」
「うん、わかったよ」
などという二人のやりとりを見ながら、キュレイがホライゾンさんに対して「よろしくお願いいたします」なんて頭を下げている。はいよろしくお願いします、なんて律儀に返すおっさんはやはりあいつと視線を合わせるようにしゃがみ込んで笑う。
「ではキュレイ、明日の夕方迎えに来る」
「はい、父上!」
「おやすみ」
「おやすみなさい!」
いつも一緒に帰る父親の背中を見るキュレイは、まあ、普段通りだがやっぱり少しだけ寂しそうだ。
「父上…」
「さびしーならおっかけてけば?」
ふるふると首を左右に振るとキュレイの顔はいつものにこにことしたものになっている。
「楽しみなさいと言われたので、めいっぱいたのしむしょぞんです!!!」
「がわいい…」
「おっさん、声にでてんだけど」
「ハッッッ」
きょとんとした顔のキュレイは、「良くご近所の方に同じようなことをおっしゃっていただいております」なんていう。おっさんはというと、わかる、と真面目に一つ頷いた。なにがだ。なにが。
改めて屋敷の中に入るとキュレイがそわそわとしながらこちらを見てくる。ついでにシリウスもにこにこしてみてきている。
「シリウス君はどうする?お兄ちゃんたちと一緒がいいかな?」
「うん!」
「あー……」
「大丈夫大丈夫、吾輩も見てるから、じゃあリビングにでも行って何か番組とかみようか」
あそこだとボードゲームもあるから、と言ってちょこちょこ走っていくシリウスをキュレイが危ないですよとかなんとかいって追いかけていくのさえ楽しそうだなと思う。ホライゾンさんはにこにこして二人をみながらついていってるけど。
「ファゼットさん、ゲーム、ゲームをしましょう!カードゲーム、してみたかったんです!!」
「はあ…いいけど……テンション高いなお前」
「お家だと、いつも父上と二人なので、こういうの出来ないんです!」
「……やりように寄っちゃあ二人でも出来るぞ」
「あと、父上が本気を出して下さらないので、ダメなんです」
ギゴウさんはまあ、我が子相手に本気出す相手じゃあないだろうと思ってしまう。ホライゾンさんもシリウスには本気を出さないし。ちなみに俺とだとガチでやらないと君強いからとかいって本気をだしてくる。
「容赦しないけどいいのか」
「覚悟の上です!」
「シリウスはパパといっしょー」
「ええーー????パパとー??パパと一緒でいいのぉ???シリウス君可愛いなあ君はー」
「シリウスかわいいー?」
「かわ」
咄嗟にホライゾンさんの口を手で抑えて喋るんじゃないと睨むと申し訳なさそうに目配せされる。最近言葉の吸収率が尋常じゃないシリウスはホライゾンさんが言った言葉をすぐオウム返しするところがある。自分の名前が「シリウス」だとわかっているのは良いが、「可愛い」といわれたら「かわいい」と返すし、「天使」というと「てんし」と返すのが教育上ちょっと考える。幸いホライゾンさんは口が悪いタイプでも発音がヤバイタイプでもないからいいんだが、ちょいちょい謎の言葉を出すのであまりシリウスに吸収させないようにしている。
「シリウスさんは可愛いですし、きっとカッコいい方になりますよ」
「キューーーレーーーイーーー」
「え?」
「かわいいー」
「あああああ」
ホライゾンさんから離れてキュレイに耳打ちをして事情を話すと成程と直ぐに納得はしてくれた。こいつ物分かりがいいっていうか、薄々感じているがまさかドのつく素直なんじゃ、いや、わからないけど。
「気を付けてお話しますね」
にこにことして頷いてくれるのは有難いが、きらきらと光りそうな笑顔にさっきからホライゾンがそわそわして視界の隅が喧しいことになっている。
夕飯にはまだ早すぎるからと始めたカードゲームは、山札から一枚引いた後、残りのカードを人数分配って、相手の手札から一枚ひいて行きながら、数字とカードの柄を揃える遊びだが、この手はカードを全部伏せて柄を揃えていくのとは違う楽しさが、有るよなと思いつつシリウスはホライゾンさんとセットで組んでいるので持ちたがるのがシリウスだ。基本的に「隠す」ことが念頭にないせいでほぼ手札が見えている。一緒に遊んでるのが楽しいんだろうなと思いつつシリウスが手札を引かなくてはならない相手が俺なので、致し方なく、そっと手札をシリウスに見えるように見せる。
引っこ抜くのが楽しいらしく、見せたって意味はないのだが、俺がガン見えしてるのにシリウスに見せないのはちょっと悪い。
キュレイはシリウスの手札から引くのだが、わあーどれにしようかなんていって多分、多分だが、自分が有利にはならないカードを選んでいるのだ。暫くしても一組も揃わないあたりそうなんだ。
結果的に言えば一番はまあもちろんシリウスで、二番目が俺で、キュレイが最後、だったが、勝ち負けというよりは遊ぶ相手がいるのが楽しいのかにこにこしているキュレイに少しほっとする。てっきり拗ねたりするのかと思っていた。
「飯食うとシリウスは寝ちゃうから、何かして遊ぶか?いつもどのくらいに寝るんだ」
ゲームを終えて夕食の準備に向かったホライゾンさんと、大人しく絵本を読んでいるシリウスを見ながらキュレイにそう問いかける。
「お夕食を食べたら、2時間くらいは起きています、いつも本とか読むので」
「あっそう……」
お夕食、って言葉使いがめちゃくちゃ、ギゴウさんの教育を感じるような気がする。
「でもお泊りのときは、ちょっと夜更かししてもいいって父上がおっしゃっていたので、いいです!」
「ああそう…」
結構あの人も自由な人なんだろうかと思いつつ、夕飯の準備が整った声を聞いて、いつもより賑やかな夕飯を経験した。四人ってこんなに賑やかなんだなと思ったし、キュレイも似たようなことをにこにこと笑って言っていた。
「うん、わかったよ」
などという二人のやりとりを見ながら、キュレイがホライゾンさんに対して「よろしくお願いいたします」なんて頭を下げている。はいよろしくお願いします、なんて律儀に返すおっさんはやはりあいつと視線を合わせるようにしゃがみ込んで笑う。
「ではキュレイ、明日の夕方迎えに来る」
「はい、父上!」
「おやすみ」
「おやすみなさい!」
いつも一緒に帰る父親の背中を見るキュレイは、まあ、普段通りだがやっぱり少しだけ寂しそうだ。
「父上…」
「さびしーならおっかけてけば?」
ふるふると首を左右に振るとキュレイの顔はいつものにこにことしたものになっている。
「楽しみなさいと言われたので、めいっぱいたのしむしょぞんです!!!」
「がわいい…」
「おっさん、声にでてんだけど」
「ハッッッ」
きょとんとした顔のキュレイは、「良くご近所の方に同じようなことをおっしゃっていただいております」なんていう。おっさんはというと、わかる、と真面目に一つ頷いた。なにがだ。なにが。
改めて屋敷の中に入るとキュレイがそわそわとしながらこちらを見てくる。ついでにシリウスもにこにこしてみてきている。
「シリウス君はどうする?お兄ちゃんたちと一緒がいいかな?」
「うん!」
「あー……」
「大丈夫大丈夫、吾輩も見てるから、じゃあリビングにでも行って何か番組とかみようか」
あそこだとボードゲームもあるから、と言ってちょこちょこ走っていくシリウスをキュレイが危ないですよとかなんとかいって追いかけていくのさえ楽しそうだなと思う。ホライゾンさんはにこにこして二人をみながらついていってるけど。
「ファゼットさん、ゲーム、ゲームをしましょう!カードゲーム、してみたかったんです!!」
「はあ…いいけど……テンション高いなお前」
「お家だと、いつも父上と二人なので、こういうの出来ないんです!」
「……やりように寄っちゃあ二人でも出来るぞ」
「あと、父上が本気を出して下さらないので、ダメなんです」
ギゴウさんはまあ、我が子相手に本気出す相手じゃあないだろうと思ってしまう。ホライゾンさんもシリウスには本気を出さないし。ちなみに俺とだとガチでやらないと君強いからとかいって本気をだしてくる。
「容赦しないけどいいのか」
「覚悟の上です!」
「シリウスはパパといっしょー」
「ええーー????パパとー??パパと一緒でいいのぉ???シリウス君可愛いなあ君はー」
「シリウスかわいいー?」
「かわ」
咄嗟にホライゾンさんの口を手で抑えて喋るんじゃないと睨むと申し訳なさそうに目配せされる。最近言葉の吸収率が尋常じゃないシリウスはホライゾンさんが言った言葉をすぐオウム返しするところがある。自分の名前が「シリウス」だとわかっているのは良いが、「可愛い」といわれたら「かわいい」と返すし、「天使」というと「てんし」と返すのが教育上ちょっと考える。幸いホライゾンさんは口が悪いタイプでも発音がヤバイタイプでもないからいいんだが、ちょいちょい謎の言葉を出すのであまりシリウスに吸収させないようにしている。
「シリウスさんは可愛いですし、きっとカッコいい方になりますよ」
「キューーーレーーーイーーー」
「え?」
「かわいいー」
「あああああ」
ホライゾンさんから離れてキュレイに耳打ちをして事情を話すと成程と直ぐに納得はしてくれた。こいつ物分かりがいいっていうか、薄々感じているがまさかドのつく素直なんじゃ、いや、わからないけど。
「気を付けてお話しますね」
にこにことして頷いてくれるのは有難いが、きらきらと光りそうな笑顔にさっきからホライゾンがそわそわして視界の隅が喧しいことになっている。
夕飯にはまだ早すぎるからと始めたカードゲームは、山札から一枚引いた後、残りのカードを人数分配って、相手の手札から一枚ひいて行きながら、数字とカードの柄を揃える遊びだが、この手はカードを全部伏せて柄を揃えていくのとは違う楽しさが、有るよなと思いつつシリウスはホライゾンさんとセットで組んでいるので持ちたがるのがシリウスだ。基本的に「隠す」ことが念頭にないせいでほぼ手札が見えている。一緒に遊んでるのが楽しいんだろうなと思いつつシリウスが手札を引かなくてはならない相手が俺なので、致し方なく、そっと手札をシリウスに見えるように見せる。
引っこ抜くのが楽しいらしく、見せたって意味はないのだが、俺がガン見えしてるのにシリウスに見せないのはちょっと悪い。
キュレイはシリウスの手札から引くのだが、わあーどれにしようかなんていって多分、多分だが、自分が有利にはならないカードを選んでいるのだ。暫くしても一組も揃わないあたりそうなんだ。
結果的に言えば一番はまあもちろんシリウスで、二番目が俺で、キュレイが最後、だったが、勝ち負けというよりは遊ぶ相手がいるのが楽しいのかにこにこしているキュレイに少しほっとする。てっきり拗ねたりするのかと思っていた。
「飯食うとシリウスは寝ちゃうから、何かして遊ぶか?いつもどのくらいに寝るんだ」
ゲームを終えて夕食の準備に向かったホライゾンさんと、大人しく絵本を読んでいるシリウスを見ながらキュレイにそう問いかける。
「お夕食を食べたら、2時間くらいは起きています、いつも本とか読むので」
「あっそう……」
お夕食、って言葉使いがめちゃくちゃ、ギゴウさんの教育を感じるような気がする。
「でもお泊りのときは、ちょっと夜更かししてもいいって父上がおっしゃっていたので、いいです!」
「ああそう…」
結構あの人も自由な人なんだろうかと思いつつ、夕飯の準備が整った声を聞いて、いつもより賑やかな夕飯を経験した。四人ってこんなに賑やかなんだなと思ったし、キュレイも似たようなことをにこにこと笑って言っていた。