幸せの青いことり

「はあー?」

 ばり、と開けた菓子の袋をそのままについキュレイに声を上げてしまう。

「お、お泊りしていってもいいですか!!」

 緊張、という顔をしているキュレイの顔は真剣だ。隣で俺が菓子を手渡すのを待ちつつ聞いていたシリウスはちょっときょときょとしたあと、おとまり、と声を跳ねさせる。キュレイが来る頻度は高くはないんだが、それでもちょくちょくと顔を合わせているせいかすっかり懐いている。

「キュレイおにーちゃんがおとまり?」
「よろしいでしょうか!!」
「お、俺に聞くなよ」

 開けた袋をシリウスに傾けると、シリウスが小さい手でかさかさと袋を掻きまわして中の個包装になっている焼き菓子を手に取る。三つ。

「ファゼットおにーちゃんの」
「ああ、はいはいどうもありがとう」
「こっちはキュレイおにーちゃんの」
「ありがとうございますシリウスさん」
「それで、これは、僕のー!」

 お父さんの色、という事でシリウスの今のお気に入りは紫色らしく、紫の包み紙に包まれたものを両手でもって笑っている。俺が緑、キュレイは青い包みだがこれも恐らくシリウス的に基準があるんだろう。基準がなんなのかはわからないんだが。

「普通、外泊っていったらまずギゴウさんに」
「父上はよろしいと仰ってくださいました」

 えへん、と胸を張られる。

「…ホライゾンさんが」
「ホライゾン様も、よろしいと仰ってくださいました」

 えっへん、と胸を張られる。

「……シリウスは良いって顔してるしなあ」
「あとはファゼットさんだけです!宜しいですか!」
「あー……」
「私ファゼットさんとお泊りしたいです!」
「えぇ?俺と……?」
「はい!」

 キラキラと眩しいまでの目で見つめられる。なんで、と聞く前にもじもじとしながらキュレイがこっちに食い掛らんばかりににじり寄ってくる。

「あのですね、この前近所のお友達さんと、お泊りをしたんです、それで、楽しくて、ファゼットさんとだったらもっと楽しいだろうなと思ったんです」
「僕はー?」
「勿論シリウスさんも一緒ですよ」
「わーい!」

 キュレイとは確かに付き合いは長いが、そういうことはしたことが無いな、と思う。俺がここから出ないのも要因なんだが。

「あー、そう、なんだ?」
「はい!だから私とご一緒にいかがでしょうか」
「……あー、まあ、楽しいか、わかんない、けど、いいよ」
「本当ですか!!!!」

 ファゼットさん、と感極まったのか思いっきり抱き着かれる。前も思ったんだが、こいつすげーいい匂いがしてくるなと考える自分がいる反面、動揺しまくってる自分も自覚する。
 こうして、キュレイが一晩、この屋敷に泊まることが決まった。
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