幸せの青いことり
「どうしてファゼットお兄ちゃんには角があるのにぼくにはないの?」
そんな言葉が耳元に飛び込んできた。いつかはそう思うだろうなと覚悟はしていたものの、まさか今このタイミングで聞くのか。よりにもよってキュレイがいる時に、と思うのだが怠くて目が開けられない。
「耳もお父さんとちがってとがってない」
そっちもか、まあ、そうか、そうだな。
「いい質問ですね!シリウスさんはとても素晴らしい観察能力です!」
明るく鈴が鳴るような声がしてくる。キュレイのやつはまだ変声期は来ていないらしい。ていうかなんだその褒め方は。
シリウスもだが、俺も、キュレイも親はいない。養父こそいるが、俺はホライゾンさんとは親子関係を結んだわけじゃないので、実質居候というかなんというかだし、キュレイはまだ外見的特徴が似てるからいいとしてもシリウスからすればそりゃあ、一応兄という立場になっている俺や、父親のホライゾンと外見特徴がかすりもしないのは不思議だろう。
「実は、シリウスさんには黙っていたことなのですが……もう隠しておくことはできませんね」
まて、お前が言うのかキュレイ。
まずい、どうせ言うなら俺の口からきっぱりいってやったほうがまだいいとうっすらなんとか目をあけ、ぐぎぎ、と緩慢に首を動かす。
「きゅれ」
「実はファゼットさんは眠りの国から来た羊の妖精さんなんです」
「よーせーさん」
びっくりしたようなシリウスの声と、そうなんです!というキュレイの声に脱力する。
「ちょっと待てこの野郎」
「お兄ちゃん」
「あ、おはようございます!ファゼットさん!」
寒くないですか?と近くに寄ってきて毛布を掛け直してくれる気遣いは有難いがさっきのとんでもない設定の発言は聞き捨てならない。
「キュレイ、お前」
「お兄ちゃんは、よーせーさんなの?」
「そんなファンシーな」
「いけませんよシリウスさん、ファゼットさんは自分が妖精さんだと自分で言ってしまうと妖精の国へ帰らないといけないしきたりなのです」
「そうなの!?」
「ああ!?」
キュレイが別に俺を馬鹿にする目的でこんな発言をしているわけじゃないのはわかる。まだチビのシリウスに、なんとかやんわりと意識を逸らす様な設定をもって言ってるだけだろうとわかってはいるが俺のそのファンシーが過ぎる設定はもうよせ。それ以上盛り込むな。
「おにいちゃんかえっちゃやだ!」
「帰っ、帰らねえよ!」
ぎゅ、としがみついてくるシリウスは泣きそうな顔をしていて、現状、マジで信じているらしい。仮に帰ったとしても俺の場所ここしかねえから戻ってくるだろとは思っても言えるわけがない。
「大丈夫ですよ、ファゼットさんはシリウスさんの事大好きですから置いていったりしません」
「ほんとぉ?」
「ほんとです!」
「お前が言うな」
ぎゅうぎゅうと縋りついたまま半べそをかいているシリウスは、心底嬉しそうに良かったと笑う。
「それに私もファゼットさんに帰ってほしくないから大丈夫です!」
「やーめーろー」
シリウスに倣ってお前まで縋りついてくるな。
「やめなーい!」
「なーい!」
「おまえらーーーっ!」
生憎払いのけるだけの力なんてものはないのだが、そもそも、なんというか、そうまで言ってもらって、悪い気はしない、というか、もぞもぞするような気持に顔が熱くなる。
そのあと、菓子の類を持って登場したホライゾンさんが「ええ、どういうこと……」と呻きながら寝落ちしてしまったシリウスとにこにこしたまま俺を見ているキュレイの様子に震えていてさらに厄介だったのは言うまでもない。
そんな言葉が耳元に飛び込んできた。いつかはそう思うだろうなと覚悟はしていたものの、まさか今このタイミングで聞くのか。よりにもよってキュレイがいる時に、と思うのだが怠くて目が開けられない。
「耳もお父さんとちがってとがってない」
そっちもか、まあ、そうか、そうだな。
「いい質問ですね!シリウスさんはとても素晴らしい観察能力です!」
明るく鈴が鳴るような声がしてくる。キュレイのやつはまだ変声期は来ていないらしい。ていうかなんだその褒め方は。
シリウスもだが、俺も、キュレイも親はいない。養父こそいるが、俺はホライゾンさんとは親子関係を結んだわけじゃないので、実質居候というかなんというかだし、キュレイはまだ外見的特徴が似てるからいいとしてもシリウスからすればそりゃあ、一応兄という立場になっている俺や、父親のホライゾンと外見特徴がかすりもしないのは不思議だろう。
「実は、シリウスさんには黙っていたことなのですが……もう隠しておくことはできませんね」
まて、お前が言うのかキュレイ。
まずい、どうせ言うなら俺の口からきっぱりいってやったほうがまだいいとうっすらなんとか目をあけ、ぐぎぎ、と緩慢に首を動かす。
「きゅれ」
「実はファゼットさんは眠りの国から来た羊の妖精さんなんです」
「よーせーさん」
びっくりしたようなシリウスの声と、そうなんです!というキュレイの声に脱力する。
「ちょっと待てこの野郎」
「お兄ちゃん」
「あ、おはようございます!ファゼットさん!」
寒くないですか?と近くに寄ってきて毛布を掛け直してくれる気遣いは有難いがさっきのとんでもない設定の発言は聞き捨てならない。
「キュレイ、お前」
「お兄ちゃんは、よーせーさんなの?」
「そんなファンシーな」
「いけませんよシリウスさん、ファゼットさんは自分が妖精さんだと自分で言ってしまうと妖精の国へ帰らないといけないしきたりなのです」
「そうなの!?」
「ああ!?」
キュレイが別に俺を馬鹿にする目的でこんな発言をしているわけじゃないのはわかる。まだチビのシリウスに、なんとかやんわりと意識を逸らす様な設定をもって言ってるだけだろうとわかってはいるが俺のそのファンシーが過ぎる設定はもうよせ。それ以上盛り込むな。
「おにいちゃんかえっちゃやだ!」
「帰っ、帰らねえよ!」
ぎゅ、としがみついてくるシリウスは泣きそうな顔をしていて、現状、マジで信じているらしい。仮に帰ったとしても俺の場所ここしかねえから戻ってくるだろとは思っても言えるわけがない。
「大丈夫ですよ、ファゼットさんはシリウスさんの事大好きですから置いていったりしません」
「ほんとぉ?」
「ほんとです!」
「お前が言うな」
ぎゅうぎゅうと縋りついたまま半べそをかいているシリウスは、心底嬉しそうに良かったと笑う。
「それに私もファゼットさんに帰ってほしくないから大丈夫です!」
「やーめーろー」
シリウスに倣ってお前まで縋りついてくるな。
「やめなーい!」
「なーい!」
「おまえらーーーっ!」
生憎払いのけるだけの力なんてものはないのだが、そもそも、なんというか、そうまで言ってもらって、悪い気はしない、というか、もぞもぞするような気持に顔が熱くなる。
そのあと、菓子の類を持って登場したホライゾンさんが「ええ、どういうこと……」と呻きながら寝落ちしてしまったシリウスとにこにこしたまま俺を見ているキュレイの様子に震えていてさらに厄介だったのは言うまでもない。