幸せの青いことり
卵を斜めにカットしたようなユリカゴに入って眠るシリウスを横目に、ホライゾンが買ってきた、アイス、を食べている。色は、ちょっとオレンジっぽい。
味はなにかの野菜と砂糖で、こういうのがつまり、正しく「甘い」、というんだと思う。甘いし、半分凍っていて、カップからスプーンで掬って口にいれるとしゃりしゃりする。のが、ちょっと面白い。
色んな味を買ってきた!と張り切っていたし、量が個人的に多いから、ホライゾンと半分にしてもらって食べている。ちょっとずつ固形の食べ物を食べはじめていて、相変わらず沢山はとれないが、こうして最近は間食も、少しする。
体の怠さは慢性的で、多分死ぬまでこうだろうなぁと、ホライゾンには言ってはいないが漠然とした、しかし確信じみたものがあって、実は諦めている。短期間で結構強い薬もきめられたことがあったから、これはもうしょうがない。自分でも服用したりしたこともあったし、ホライゾンにもうやめるように言われて、別に激しい中毒症状はないが、こうして思考をするのもおっくうになってくるくらいには頭のなかをダメにする後遺症が強い。
口に運ぶアイスの冷たさだけが一瞬だけ頭をクリアにするような、気もする。
アイス、も、色々味やら種類があって、それもやっぱりよくわからないが、この、しゃりしゃりするのは好きかもしれない。
舌に乗せてとろとろ勝手にとけるのも、面白い。こういう食べ物もあるのかと、つい舌を口の中でもぞもぞ動かしてしまう。
シリウスは最近よく、あーだのうーだのいう。あまり見てる限り泣くこともない。少しぐずってもホライゾンが買ってきたユリカゴが自動感知してゆらゆら動くので特になにかてをかけることも、俺はないし、ホライゾンが俺に何かしろと言うこともない。ちょっと見ててね(そのままの意味)くらいだ。
どうしても手が離せない仕事にかかる時はこうして俺にあてがわれた部屋に、ホライゾンがシリウスを運んできてちょっと見てて、という以外は、基本シリウスはホライゾンが自室なり仕事部屋で世話を焼いている。そういう、手を掛けてもらうというのは、赤ん坊の特権だなと思う。
羨ましいのかと言われると、そうかもしれない。ちょっと羨ましい。気を使われているのかホライゾンは俺がこうして横になっていると声を積極的に掛けてこない。寒くはないかと聞いてくるくらいだ。正直薬の後遺症で熱いか寒いかちょっとわからなくなってるから何とも言えない、いえないが適温にしているらしいのでちょうどいいんだろうと思う。
寒かったらまず、アイスがこんなにでろでろに溶ける事はないと思うし。
あのシャリシャリとした奇妙な歯触りというか舌触りが面白かったのに、勿体ないことをしたかもしれない。