幸せの青いことり
「はぎゃあああ……可愛い、可愛いよシリウス君、ものすごくあまりにも可愛いよぉ…天使かな…?君は天使かな……うう、可愛いがすぎている、君の存在の尊さを表現するべき語彙がもはや見当たらない……」
「昨日も聞いたな」
「毎日シリウス君は可愛いよ!!!!??」
パパ、パパ、と笑いながらホライゾンのジャボを触って遊んでいるシリウスを見ながら飽きもせずホライゾンがうめいている。
「くぅう……離れたくない!シリウス君!!」
「いい加減離れて原稿しろ」
「う、う、うぐ……」
抱き上げていたシリウスを俺に預けるおっさんの顔は悲愴だ。一生の別れか何かかくらいに悲しそうな顔だが、それよりも大事なのは締め切り間近の原稿だと俺は思うんだが。
「うぅ……原稿、してきます……」
「ぱぱ…?」
「ハァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!シリウスk」
「新刊落ちましたっていいてえのかおめーは」
「ハッッッ……ぎゅ、う、うう」
めそめそと背中を丸めながら私室へ戻っていくおっさんを見送るのも慣れた光景になってきた。家の中だから見送るもくそもないんだが。
簡単な言葉くらいは覚えてきたシリウスに対して、ホライゾンは猶更熱心に世話を焼いているのが現状だ。いい親なんじゃないかとは思う、思うが、昨日はうさぎ、今日はひよこのベビー服をきているシリウスの写真を飽きもせずに延々撮っているのはどうなんだこいつと思ってしまう。悪いとは言わない。むしろよく飽きねえものだなこのおっさんと思ってしまう。俺なんかは、ああ可愛いもんなんだなとは思うがあんな熱意をもっては「可愛い」という感情がない。
シリウスは大人しい。ほっといても結構安心してほっとけるタイプというかのんびりしている奴なのかはしらないが動きものそのそしているし、まあ、たまに積み木を口に入れているくらいなものだと思う。
「ふー」
「はいはい」
こういう単語を言うとき必ずおれを見上げるので、俺の事を呼んでるんだろうなあと勝手に思っている。まあ、ホライゾンが目の前でファッゼット君と連呼してるし、ふぁってまだ難しいんじゃないだろうか。
「どうした」
「ぱぱ?」
「パパは忙しいんだよ」
ホライゾンは騒がしいが俺はあまり喋りたくない。あいつが賑やかだからかいなくなって暫くすると父親を捜しているらしくきょろきょろとしだす。別に部屋に連れて行ってもいいんだが、ホライゾンの作業が進まないことよりこいつがうっかりPCのいろんなボタンを押してデータぶっ飛ばす方が危険だから連れて行ったことはないしホライゾンにもやめておけと注意してある。あいつ絶対好き勝手触らせるタイプだ。
「パパがお仕事終わるまで…えと、おにいちゃんと遊ぼうな」
ふにゃふにゃ、と笑うシリウスを見ていると、まあ、ホライゾンが言うように可愛らしいやつだと思う。声ももともとそうなのかでかい方じゃないし、夜泣きもかなり小さい。赤ん坊としてどうなんだお前ソレは、と思うときもある。
シリウスに対してホライゾンを「パパ」と指すことも、自分を「おにいちゃん」という事も慣れてきてしまった。