《事件か？事故か？イリヤ夫妻 行方不明》
《天才夫婦に一体何が？》
《神隠しか？深まる謎》
《捜索隊の結成予定は？》


必要最低限の荷物だけを持ったなまえは、カイナシティから朝一の船に飛び乗り、イッシュ地方を目指していた。

カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス、アローラ、ガラル、パルデア。
見事にすべての地方新聞の朝刊が、イリヤとレリアのことをトップ記事として派手に取り扱っていた。

同じくテレビ、ラジオもこの話題で持ち切りで、すべての局が臨時ニュースをやっている。

“おはようございます。テレビコトブキが朝のニュースをお届けします。
本日の速報 トップニュースです。
世界的なポケモン研究家のイリヤ博士、考古学者のレリア博士の両名が行方不明とのニュースが入ってきました。
ふたりは研究に行っていた、との情報があるようですが、どこに行っていたのかは具体的にはわかっておりません。
詳しいことは現在調査中とのことですが、詳細が分かり次第お伝えします”

“心配なニュースが入ってきました。
元ジョウト地方チャンピオンのイリヤ博士、妻のレリア博士が行方不明になったとの情報が入りました。
どこで行方不明になったのかは、調査中とのことです。
夫妻にはお嬢さまがいらっしゃるようですが、彼女が無事なのかはわかっておりません。
お嬢さまは名前も非公表で、姿も一切見せたことがないことから、≪ファントム・プリンセス≫と呼ばれており、容姿なども不明です。
彼女も一緒に行動を共にしていたのか、それも含めて現在調査中とのことです。
以上、ジョウト コガネラジオ局からお伝えしました”


この話題以外は何もやっていないという異例の事態に、驚きを通り越して逆に関心する。
これほどまでに自分の両親は有名な存在なのだと、改めて思い知ることとなった。

しばらく黙ってテレビを見ていると、ドアをノックする音がした。
朝食のルームサービスがやってきたようだ。
お待たせいたしました、と丁寧に言った船員にお礼を言って朝食を受け取る。
まさかこの船員も、今自分の目の前にいるのが、テレビや新聞で騒がれている“ファントム・プリンセス”だとは夢にも思わないのだろう。

こんがり焼かれたクロワッサン、鮮やかな黄色のオムレツ、みずみずしいサラダ、ミルクがたっぷり入ったカフェオレがトレーに乗せられている。
とても美味しそうな朝食だったが、どうしても食べる気分にはなれない。

そんななまえの心情とは正反対に、窓の外は青い空と青い海がどこまでも美しく広がっていた。