ミモザの花が咲く頃に
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“ただいま電話に出ることができません。おかけ直しください”
エンジンシティのポケモンセンターには、ライチュウの治療を待つ、なまえとバクフーンの姿があった。
待っている間にワタルに再び連絡をしたが、やはり、彼は電話には出なかった。
今日は、挑戦者がたくさんいるのだろうか。
ワタルは電話に出られなくても、合間を見ては必ず折り返しの連絡をくれていたが、今日は折り返しもない。
よほど忙しいのだろうと電話を切った時、ジョーイから声をかけられた。
「なまえさん、ちょっとよろしいでしょうか」
ジョーイに呼ばれて案内された個室には、ガーディを連れたジュンサーの姿があった。
何かあったんですか、となまえが訊くと、ふたりは顔を見合わせた。
「連れてきていただいたライチュウなのですが・・・治療中、毒消しが効かず、毒の成分を詳しく調べたところ・・・どうやらポケモンの毒タイプの攻撃ではなく、人工的に作られた毒みたいなんです。それで念のためジュンサーさんに連絡させていただきました」
ジュンサーも、アローラライチュウは、本来アローラ地方にしか生息しないポケモンであり、野生でガラルにいるなど今まで聞いたこともない、と話を続けた。
トレーナーが逃がした可能性もあるが、人工的な毒を浴びていたとなると、アローラでポケモンハンターなどに捕らえられて、逃げてきた可能性も十分に考えられるという。
予想もしていなかった展開に、なまえも驚きを隠せない。
「残念ながら、ワイルドエリアでは過去に何度もハンターによるポケモン捕獲事件が発生していまして・・・現在パトロールをしているところです。周囲で、ハンターなどは見かけませんでしたか?」
ジュンサーの質問に、なまえは首を横に振った。
「そうですか・・・ご協力、ありがとうございました。ライチュウは、我々ガラル警察が責任をもってアローラヘ送り届けますのでご安心ください」
「もう少しで治療が終わると思います。もうしばらくお待ちくださいね」
ふたりの背中を見ながら、ふと両親とのフィールドワークに行った時のことを思い出す。
今まで、怪我をしたポケモンたちをたくさん見てきた。
自然の怪我ではなく、傷つけられたポケモンたちもいた。
残念ながら、金儲けや私利私欲のために捕獲する人がいるのも事実だ。
両親はそれをひどく嫌っていた。
守るために尽力する人間もいれば、その逆もある。
同じ人間なのに、何が違うのだろう。
答えのない疑問をぼんやりと考えていると、再び名前を呼ばれた。
どうやらライチュウの治療が終わったようだ。
『良かった、もう大丈夫?』
なまえが優しく頭を撫でると、警戒する様子はなく、甘えるようにじゃれてきた。
早くおうちに帰れるといいわね、と声をかけると、ライチュウは一瞬、驚いた表情を浮かべて、なまえに抱きついてきた。
その様子を見たジョーイは、思いがけない言葉をかけた。
「なまえさん。この子・・・あなたと一緒に行きたいんじゃないかしら」
『え・・・?』
ジョーイからの思わぬ申し出に、なまえは驚く。
なまえさんと離れたくないのね、と言われたライチュウは、満面の笑みで大きく返事をした。
『私と・・・来てくれるの?』
「ライ!」
ライチュウの返事に、バクフーンも大きく頷く。
ひとりと1匹の旅は、ひとりと2匹の旅となった。