ミモザの花が咲く頃に
Your Name?
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「こんなところでお散歩ですか?」
黒いスーツに身を包んだ長身の男は、にこやかに笑顔を浮かべながらゆっくりとなまえに近づいてくる。
今日は本当にいい天気ですねえ、という言葉とは裏腹に、まったく笑っていないその瞳に感じたのは恐怖だった。
反射的に後ずさりしたなまえとは反対に、まさに電光石火のごとく、主人を守るために一歩前に出たバクフーンは、首元の炎を激しく揺らして威嚇の意を示した。
そんなバクフーンの様子に、さすがはチャンピオンの下で育ったポケモンですね、と半ば嬉しそうに告げるその言葉が称賛を示しているのか、それとも風刺なのかはわからない。
「天才と呼ばれる両親を持てば、その娘も才女になる。世の理というわけですか……
私もイリヤ博士とレリア博士を探しているんです。私と共に来ませんか?」
悪い話じゃないはずです、と薄く笑みを浮かべる男に、なまえは質問を投げかけた。
『あなたは、誰ですか』
まずは、そこからだ。
声が震えているのが、自分でもわかった。
相手はひとりだ。
それなのに、空気が凍り付くような威圧感。
それはまるで、絶対零度のような。
ただ者ではない。それだけはわかった。
緊張感で張り詰めるなまえと、激しい威嚇の体勢を崩さないバクフーンに対して、男は名乗るほどの人間じゃありませんよ、と言って笑った。
『・・・お名前すら教えていただけないのは残念です。申し訳ありませんが、急いでおりますので・・・失礼させていただきます』
相手を極力刺激しないよう、穏やかに済むならば済ませたい。
この状況の中では、それが最善の精一杯の言葉だった。
そんななまえに対して、男は薄く笑みを浮かべてさらに言葉を投げかける。
「貴女は本当に聡明なお方だ、プリンセス。
あぁそうでした。ワタルに助けを求めても無駄ですよ。彼は今、“とても忙しい”ですからね」
「・・・!!」
今、自分がもっとも頼る人物の名前を出され、さすがに動揺したなまえの様子を見て、
少し満足したような、なんとも言えない表情を見せたと同時に、翼が羽ばたく音が頭上から聞こえた。
ひらりとなまえの目の前に落ちた漆黒の羽。
空飛ぶタクシーだった。
またお会いしましょう、と一言だけ残すと、男はゴンドラに素早く乗り込み、青空へと飛び立って行った。
黒いスーツに身を包んだ長身の男は、にこやかに笑顔を浮かべながらゆっくりとなまえに近づいてくる。
今日は本当にいい天気ですねえ、という言葉とは裏腹に、まったく笑っていないその瞳に感じたのは恐怖だった。
反射的に後ずさりしたなまえとは反対に、まさに電光石火のごとく、主人を守るために一歩前に出たバクフーンは、首元の炎を激しく揺らして威嚇の意を示した。
そんなバクフーンの様子に、さすがはチャンピオンの下で育ったポケモンですね、と半ば嬉しそうに告げるその言葉が称賛を示しているのか、それとも風刺なのかはわからない。
「天才と呼ばれる両親を持てば、その娘も才女になる。世の理というわけですか……
私もイリヤ博士とレリア博士を探しているんです。私と共に来ませんか?」
悪い話じゃないはずです、と薄く笑みを浮かべる男に、なまえは質問を投げかけた。
『あなたは、誰ですか』
まずは、そこからだ。
声が震えているのが、自分でもわかった。
相手はひとりだ。
それなのに、空気が凍り付くような威圧感。
それはまるで、絶対零度のような。
ただ者ではない。それだけはわかった。
緊張感で張り詰めるなまえと、激しい威嚇の体勢を崩さないバクフーンに対して、男は名乗るほどの人間じゃありませんよ、と言って笑った。
『・・・お名前すら教えていただけないのは残念です。申し訳ありませんが、急いでおりますので・・・失礼させていただきます』
相手を極力刺激しないよう、穏やかに済むならば済ませたい。
この状況の中では、それが最善の精一杯の言葉だった。
そんななまえに対して、男は薄く笑みを浮かべてさらに言葉を投げかける。
「貴女は本当に聡明なお方だ、プリンセス。
あぁそうでした。ワタルに助けを求めても無駄ですよ。彼は今、“とても忙しい”ですからね」
「・・・!!」
今、自分がもっとも頼る人物の名前を出され、さすがに動揺したなまえの様子を見て、
少し満足したような、なんとも言えない表情を見せたと同時に、翼が羽ばたく音が頭上から聞こえた。
ひらりとなまえの目の前に落ちた漆黒の羽。
空飛ぶタクシーだった。
またお会いしましょう、と一言だけ残すと、男はゴンドラに素早く乗り込み、青空へと飛び立って行った。