ミモザの花が咲く頃に
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「マツバはん、その・・・視えたりせえへんの?」
考え事をしていたのか、椅子に座って静かに目を閉じていたマツバに言葉を選んで遠慮がちにそう問いかけたのは、アカネだった。
彼女の後ろには、わずかに不安の色を見せるなまえの姿もある。
問いかけられた言葉の意味を、彼は瞬時に理解した。
マツバの呼び名は“千里眼を持つ修験者”。
彼が持つその特別な力で、イリヤとレリアの居場所を探し出せないかと思ったのだろう。
言葉にこそ出さないが、他のジムリーダーたちも、マツバとアカネの会話を気にしているのが手に取るようにわかった。
「僕もやってみたんだけどね・・・」
彼も考えることは同じだったようで、マツバはすでに試みていた。
「視れなかったんだ」
結果は、彼の言葉の通りだった。
ひとつだけ予想外だったのは、“視えない”のではなく、“視れない”ということだった。
「視ようとすると靄がかかる、と言ったらいいのかな。不思議な力に遮られているような・・・何とも言えない感覚だった」
言葉ではとても説明が難しいが、例えるならば、ゴーストタイプ特有の霊的な不思議な力や、エスパータイプが持つ超能力のようなものが、マツバの能力を拒否しているような感覚だった。
マツバも自身の能力に一縷の望みと期待をかけていたが、残念ながらそれは叶うことはなかった。
変に期待させるのも悪いと感じた彼は、これをなまえに伝えるかを迷っていたのだった。
役に立てなくてすまない、と謝るマツバに、なまえは首を横に振った。
そのお気持ちだけで十分です、と微笑んだ彼女を見て、ますます申し訳ない気持ちと情けない気持ちが交差する。
選ばれし者となるために、幼いころから厳しい修行を積んできた。
けれど、肝心なものは見れない。見えない。
ーそう、いつも。
だが、マツバにはひとつだけ確信があった。
「でも、最悪の事態ではないことは確かだ。わずかだけれど・・・生気を感じる。ふたりともね」
視ることこそ出来なかったが、生命力のようなエネルギーを感じとったのは事実だ。
『それ、本当ですか』
なまえの問いに、彼は力強く頷いた。
命は尽きていないということだけは、間違いないと言えるだろう。
その言葉は、この場にいる全員を安心させるには十分すぎる言葉だった。
また涙を見せる泣き虫なアカネを、なまえがなだめていた。
「・・・君は優しいね、なまえ」
そんな彼女の姿を見て、自然と言葉が零れ落ちた。
たとえそんな素振りは見せなかったとしても、家族が突然行方不明となったのだ。
彼女の心の奥底では、孤独や混乱、不安に襲われているのだろう。
それでも取り乱すこともなく、相手を気遣える強さを持ち合わせる彼女の姿に強さを感じた。
「僕は必ず・・・君の力になると約束するよ」
この能力は、自分だけの特権だ。
他のジムリーダーや四天王、チャンピオンですら持ち合わせることがない。
この力を身に付けるために、子供にとっては過酷とも言える苦しい日々を送ってきた。
やっと手に入れた力は、歓迎されるばかりではなかった。
不可思議な能力を不気味がられることも、恐れられることもあった。
大変だった過去の日々も、この能力もすべて本望だ。
ー彼女の役に立てるのならば。
ありがとうございます、と笑ってくれた彼女の笑顔は、エンジュの夕日のように穏やかだった。
考え事をしていたのか、椅子に座って静かに目を閉じていたマツバに言葉を選んで遠慮がちにそう問いかけたのは、アカネだった。
彼女の後ろには、わずかに不安の色を見せるなまえの姿もある。
問いかけられた言葉の意味を、彼は瞬時に理解した。
マツバの呼び名は“千里眼を持つ修験者”。
彼が持つその特別な力で、イリヤとレリアの居場所を探し出せないかと思ったのだろう。
言葉にこそ出さないが、他のジムリーダーたちも、マツバとアカネの会話を気にしているのが手に取るようにわかった。
「僕もやってみたんだけどね・・・」
彼も考えることは同じだったようで、マツバはすでに試みていた。
「視れなかったんだ」
結果は、彼の言葉の通りだった。
ひとつだけ予想外だったのは、“視えない”のではなく、“視れない”ということだった。
「視ようとすると靄がかかる、と言ったらいいのかな。不思議な力に遮られているような・・・何とも言えない感覚だった」
言葉ではとても説明が難しいが、例えるならば、ゴーストタイプ特有の霊的な不思議な力や、エスパータイプが持つ超能力のようなものが、マツバの能力を拒否しているような感覚だった。
マツバも自身の能力に一縷の望みと期待をかけていたが、残念ながらそれは叶うことはなかった。
変に期待させるのも悪いと感じた彼は、これをなまえに伝えるかを迷っていたのだった。
役に立てなくてすまない、と謝るマツバに、なまえは首を横に振った。
そのお気持ちだけで十分です、と微笑んだ彼女を見て、ますます申し訳ない気持ちと情けない気持ちが交差する。
選ばれし者となるために、幼いころから厳しい修行を積んできた。
けれど、肝心なものは見れない。見えない。
ーそう、いつも。
だが、マツバにはひとつだけ確信があった。
「でも、最悪の事態ではないことは確かだ。わずかだけれど・・・生気を感じる。ふたりともね」
視ることこそ出来なかったが、生命力のようなエネルギーを感じとったのは事実だ。
『それ、本当ですか』
なまえの問いに、彼は力強く頷いた。
命は尽きていないということだけは、間違いないと言えるだろう。
その言葉は、この場にいる全員を安心させるには十分すぎる言葉だった。
また涙を見せる泣き虫なアカネを、なまえがなだめていた。
「・・・君は優しいね、なまえ」
そんな彼女の姿を見て、自然と言葉が零れ落ちた。
たとえそんな素振りは見せなかったとしても、家族が突然行方不明となったのだ。
彼女の心の奥底では、孤独や混乱、不安に襲われているのだろう。
それでも取り乱すこともなく、相手を気遣える強さを持ち合わせる彼女の姿に強さを感じた。
「僕は必ず・・・君の力になると約束するよ」
この能力は、自分だけの特権だ。
他のジムリーダーや四天王、チャンピオンですら持ち合わせることがない。
この力を身に付けるために、子供にとっては過酷とも言える苦しい日々を送ってきた。
やっと手に入れた力は、歓迎されるばかりではなかった。
不可思議な能力を不気味がられることも、恐れられることもあった。
大変だった過去の日々も、この能力もすべて本望だ。
ー彼女の役に立てるのならば。
ありがとうございます、と笑ってくれた彼女の笑顔は、エンジュの夕日のように穏やかだった。