ミモザの花が咲く頃に
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「しかし、なまえさんを狙ったということは・・・相手はなまえさんを知っているということか?」
ハヤトが口にしたそれこそが、今回の最大の問題だった。
メディアには一切出ていないなまえを知っているとなると、また狙われる可能性も十分にある。
そうなれば、これから彼女がどのような行動に出たとしても、支障が出てしまうことは明らかだった。
重く静まり返ってしまった部屋の空気を、そうとも限らないぜ、と否定の意向を示して変えたのはヤーコンだった。
「奴らはなまえ嬢の写真を欲しがった。しかも“顔がしっかり写った”ものを欲しがったということは、おそらく相手はなまえ嬢の顔をきちんと知らない。だからこそ確証が欲しかった。・・・こんなところじゃねえか」
確かに、カメラマンたちは“顔がはっきり写った”写真を撮るようにと指示されたと言っていた。
なまえは帽子を被っていたため、姿は撮れても、近付かないと顔は写らなかったのだろう。
僕も同意見です、と手を挙げたのは、若き新星ジムリーダーのチェレンだった。
あくまでも僕の憶測ですが、と前置きをして冷静に話し出すその姿は、大人顔負けの貫禄を感じさせる。
「相手もなまえさんだとわかって狙っていたのなら、そのまま連れ去るチャンスはあったはずだ。
ヤーコンさんの言う通り、相手はなまえさんの顔がわからない。
となれば、どうやって探し出すか。
もしかしたら、イリヤ博士かレリア博士に親交があった人のところに行けば、なまえさんに辿り着けるかもしれないと思った。
実際にアロエさんは、レリア博士と親交がある」
確かに、アロエは昔、レリアと共に考古学特集の雑誌に掲載されたことがあった。
「そんな時に、アロエさんとアーティさんの前に、若い女性が現れた。
それで相手はなまえさんではないかと思い、写真を欲しがった。
・・・というのが、僕の考えです」
憶測とはいえ、チェレンの考察は、確かに筋が通っていた。
なまえではなく、アロエに目を付けていたのだとしたら、それも十分に考えられる事態だ。
そうなると、もうひとつの可能性が浮上してくる。
「仮にその考えが正しければ、アロエさんのことを誰かが監視していた可能性があるということになる。
そうでなければ、なまえがアロエさんと合流したタイミングを見計らい、無関係な人間を使ってまでなまえの写真を撮ってこいなど、細かい指示は出せないはずだ」
ワタルの言っていることが本当であるとしたら、この件が事故ではないということをますます強く物語っていることになる。
そして思っていた以上に、事態は深刻であることを強く証明していた。
「とにかく、今の私たちに出来ることはひとつ。
ここにいる全員で、なまえを全力で守り抜くことよ。・・・ジムリーダーの名にかけて」
ジムリーダーは、“選ばれた者”たちだ。
もしかしたら、大きな戦いが始まるかもしれない。
プライドをかけてなまえを守り抜くという強い意思を、イブキはその言葉で示したのだ。
「1日でも早くふたりを見つけ出すために、我々も全力で捜査します。皆さん、よろしくお願いします」
ワタルの言葉に、全員が強く頷く。
それはふたつの地方のジムリーダーたちが、一致団結した瞬間だった。