ミモザの花が咲く頃に
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思い返せば、物心ついた時から、父も母も、本当に忙しい人だった。
家にいるということはほとんどなく、さまざまな地方・・世界中を飛び回っていた。
けれど、不思議とそれを寂しいと思ったことも、不満に感じたこともなかった。
その理由がいくつかあることに気づいたのは、つい最近だった。
1つ。
父も母も、いつも楽しそうだったこと。
「発見」と「勉強」が大好きだった両親は、忙しい中でもいつでも楽しそうだった。
そんなふたりの姿は、娘の自分から見ていても、とても輝いて見えた。
2つ。
多くの人が見守ってくれていたこと。
ジョウト地方の元チャンピオンという肩書きを持つ父と、考古学者のトップである母は、とにかく顔が広かった。
どの地方でも知らない人はいないほど有名だったが、決して偉ぶることもなく、優しく穏やかな性格が皆から好かれ、慕われていた。
そのおかげで友達も多く、娘である自分もジムリーダーや四天王、そしてチャンピオンたちとも交流を持てたのだ。
3つ。
忙しくても、約束は必ず守ってくれていたこと。
本業の研究職だけでなく、バトルの大会のゲストや、テレビやラジオの出演など、メディアにも引っ張りだこだった。
「いつ寝ているのかわからない」と新聞に書かれたこともあるほど忙しい中でも、ふたりは必ず約束は守った。
それは私に対しても例外ではなかった。
誕生日の時は、都合をつけて必ず帰ってきてくれていたし、どうしても帰れない時には、「いつか」ではなく、「この日に必ず帰るからね」と言って、必ず帰ってきてくれた。
そう、今回も、
戻ってくるはずだったのだ。
ひとりの少女の長い旅路の幕開けが近いことなど、
誰も予想もしていなかった。
ミモザの花が咲く頃に