イッシュ地方 シッポウシティ

今日は年に一度の、お祭りの日を迎えていた。
アロエを中心に住民たちが協力して作り上げる祭りはイッシュでも有名な行事で、一般客はもちろん、歴史ある町にちなんで学者や探検家なども多く立ち寄る。
多くの屋台なども出ており、いつもはのんびり穏やかな街並みが、楽しそうな声で活気づいていた。
アロエは来訪者にカセキや採掘品の展示の説明をしていた。
この町にアトリエを構えるアーティもジムを休んで参加しており、自身の作品などを販売していた。

「イッシュ名物、アイスの試食はいかがですかー？」

屋台から、ヒウンアイスの試食が始まる声が響いた。
子供たちと多くのポケモンが、続々と集まりだす。
アロエのミルホッグとハーデリアが、なまえの元へとやってきた。
どうやら、バクフーンを呼びに来てくれたようだ。
遊んでおいで、とバクフーンに声をかけて優しく撫でると、３匹は嬉しそうに走っていく。

いきなり声を掛けられたのは、その後ろ姿を見送った直後だった。

「すみません、本日のお祭りの取材をしておりまして。少しインタビューさせていただいてもよろしいですか？」

そう声を掛けたのは、メガネを掛けたインタビュアーの女性と、体格の良いカメラマンだ。
ふたりはなまえの返事を待たずに、口早に質問を投げ掛けてきた。

「こちらのお祭りには、よく来られるんですか？」
『い、いえ。はじめてです』
「そうでしたか。ガイドブックとかをご覧になって？」
『・・ええ、そうです。』
「ということは・・・お住まいはイッシュ地方ではない？」
『はい、違いますが・・・』
「なるほど。ちなみにどちらからいらしたのですか？あと、ぜひお名前も教えてください」
「・・・・・」

その畳み掛けるような勢いに、恐怖を感じた。
そしてどう考えても、質問の趣旨が違う。

『あ、あの・・・そろそろよろしいですか』

「こちらも仕事なので。ぜひご協力ください」

表情こそはにこやかだったが、後ろにはいつの間にかドレディアとダーテングもいることに気付く。
最初はインタビュアーとカメラマンだけだったのに。
そこでやっと、囲まれたのだと悟った。
しかも運の悪いことに、バクフーンは今、近くにいない。

それとも、最初からバクフーンが離れるタイミングを見計らっていたというのか。

どちらにせよ、状況はかなり悪いのは間違いがない事実だった。
丸腰状態の中でどうやってこの場を切り抜けるか必死に頭を働かせ、考えていた時だった。

「ハハコモリ、リーフブレード！」