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「トラファルガー。今、お前の身を蝕んでいるものは《呪い》だ。現実から意識が離れると、お前自身の心を縛り付けているものが夢として映し出される。術者のせいではなく、呪われた側が苦しめられている記憶のせいだ。・・・心当たりはあるのだろう?お前ほどの大物に、今にも死にそうな顔をさせるほどの何かが」
その言葉を投げかけられた瞬間、ローの表情がわずかに歪んだ。
ー忘れられるわけがない。
真実を知りながら目を背けた政府に、
栄華を求めた権力に、すべてを奪われた忌まわしい記憶。
《憧れの町》は《悲劇の町》へと変わり、何もかもが失われた。
忘れてしまいたい。
そう願っても忘れられない。忘れられるわけがない。
脳裏に焼き付く、あの業火を。
命の灯火を消されてしまった、家族や友の姿を。
自身の命が永くはないことを悟り、怒りの矛先を破壊へと向けたことを。
「お前は今、自らの身を犠牲にしている。そこまでしてなぜなまえを守る必要がある?お前もあの女の力に目が眩んだのか」
ローは医者だ。
身体のことに関してはエキスパートだ。
彼自身が一番理解しているのだ。このままの状態が続けば、決して無事ではいられないことを。
「生憎だが・・おれはそんなものに興味はない」
なまえが持つ力のことなど、最初は知らなかった。
知ったところで、ローはきっと変わることはなかっただろう。
「ならばなおさら不可解だ。答えろ、トラファルガー。なぜあの女を守る」
女には理解ができなかった。
世界を揺るがすとまで言われている力を、なぜ欲しがろうとしないのか。
女にはわからなかった。
なぜローがこんな状態になってまで、なまえを守ろうとするのか。
このまま押し問答を繰り返しても、どこまで行っても平行線であろうことは、お互いに気付いていた。
「もう二度と・・・失うわけにはいかないからだ」
すべてを奪われ、復讐という道に足を踏み入れた自分に手を差し伸べて、不器用ながらも真っ直ぐに光へと導いてくれた、たったひとりのかけがえのない恩人ですら、命を落としてしまった。
自分のせいで。
大切なものなど、作りたくなかった。
いつか同じように崩れ去ってしまうのならば、何もないほうが良かったのだ。
そんな彼に、同じ志を抱く仲間が出来た。
仲間たちと歩む旅路の途中で、なまえと出会った。
それが運命だったのか、偶然だったのかはわからない。
けれど、ローはなまえと出会い、その手で彼女を救ったのだ。
非力だったあの頃は、泣くことしか出来なかった。
守られることしか出来なかった。
でも、今は違う。
自分の足で歩ける。どこへでも行ける。この手で守れる。
自分の運命を、自分で決められる。
「おれはもう二度と・・・!失うわけにはいかないんだ!!」
“ROOM”という声と共に、ロー達と女を隔てる薄い壁が現れる。
それはかつての彼には出来なかった、誰かを・・・なまえを守るための境界線であった。
今度は、絶対に。
決して、もう二度と。
その言葉を投げかけられた瞬間、ローの表情がわずかに歪んだ。
ー忘れられるわけがない。
真実を知りながら目を背けた政府に、
栄華を求めた権力に、すべてを奪われた忌まわしい記憶。
《憧れの町》は《悲劇の町》へと変わり、何もかもが失われた。
忘れてしまいたい。
そう願っても忘れられない。忘れられるわけがない。
脳裏に焼き付く、あの業火を。
命の灯火を消されてしまった、家族や友の姿を。
自身の命が永くはないことを悟り、怒りの矛先を破壊へと向けたことを。
「お前は今、自らの身を犠牲にしている。そこまでしてなぜなまえを守る必要がある?お前もあの女の力に目が眩んだのか」
ローは医者だ。
身体のことに関してはエキスパートだ。
彼自身が一番理解しているのだ。このままの状態が続けば、決して無事ではいられないことを。
「生憎だが・・おれはそんなものに興味はない」
なまえが持つ力のことなど、最初は知らなかった。
知ったところで、ローはきっと変わることはなかっただろう。
「ならばなおさら不可解だ。答えろ、トラファルガー。なぜあの女を守る」
女には理解ができなかった。
世界を揺るがすとまで言われている力を、なぜ欲しがろうとしないのか。
女にはわからなかった。
なぜローがこんな状態になってまで、なまえを守ろうとするのか。
このまま押し問答を繰り返しても、どこまで行っても平行線であろうことは、お互いに気付いていた。
「もう二度と・・・失うわけにはいかないからだ」
すべてを奪われ、復讐という道に足を踏み入れた自分に手を差し伸べて、不器用ながらも真っ直ぐに光へと導いてくれた、たったひとりのかけがえのない恩人ですら、命を落としてしまった。
自分のせいで。
大切なものなど、作りたくなかった。
いつか同じように崩れ去ってしまうのならば、何もないほうが良かったのだ。
そんな彼に、同じ志を抱く仲間が出来た。
仲間たちと歩む旅路の途中で、なまえと出会った。
それが運命だったのか、偶然だったのかはわからない。
けれど、ローはなまえと出会い、その手で彼女を救ったのだ。
非力だったあの頃は、泣くことしか出来なかった。
守られることしか出来なかった。
でも、今は違う。
自分の足で歩ける。どこへでも行ける。この手で守れる。
自分の運命を、自分で決められる。
「おれはもう二度と・・・!失うわけにはいかないんだ!!」
“ROOM”という声と共に、ロー達と女を隔てる薄い壁が現れる。
それはかつての彼には出来なかった、誰かを・・・なまえを守るための境界線であった。
今度は、絶対に。
決して、もう二度と。
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