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ローの悪夢は、悪化の一途を辿る一方だった。
もともとひどい隈はさらに漆黒の色を増し、その風貌からは疲れきった色しか見えない。
睡眠薬を飲んだとしても、同じ結果が待ち構えているのだろう。
少しでも睡魔に襲われないように、せめてもの抵抗として、コーヒーの摂取量だけが増えていく。
“死にたくなるかもしれないがな”
あの女が告げた言葉の意味は、こういうことだったのだろう。
ことの始まりは、あの不気味な霧に包まれてからだった。
眠ってしまえばあの光景が広がる。
だからと言って拒んで起き続けていれば、身体が悲鳴をあげるのは当然のことだった。
自分が弱っているのを見計らい、襲撃に来るのではないか。
こんな状態で敵に攻め込まれれば、100%勝てる保障もない。
負けるつもりはないが、今まで経験のない事態に襲われている今、船を出すわけにはいかなかった。
これからどうするのか、
治療法はあるのか、
そもそも治るのか、
なぜ彼女を知っているのか、
なぜ彼女を狙っているのか。
考えることは山のようにある。
傷を負わされるよりも、遥かに辛い。
でも、クルーの前で、なまえの前で、 こんな姿など見せたくない。
今のローを支えるのは、船長という肩書きの責任と、見栄と、意地だった。
そして思うのだ、
おれの前ではドジばかりで、笑ってばかりいた貴方も、
おれの知らないところで、こんな思いをしていたのではないのかと。
コンコン、とノックの音が聞こえたが、今のローにはそれすらも煩わしい。
無視をしようかとも思ったが、扉の向こうから聞こえた声に、無視を決め込むことは出来なかった。
『ロー、私よ』
声の主に、重い腰を上げて、ドアを開ける。
自分の顔を見た途端に、なまえの表情は一瞬で曇った。
そんなにひどい顔をしているのだろうか、自分は。
必死に平静を保とうとするが、それすらも無意味なのだと、彼女の表情が物語っていた。
『ロー・・・もうこれ以上、黙っている訳にはいかないわ』
はっきり告げられたその言葉は、決して彼女だけの言葉ではないのだろう。
『話して、ロー。一体何が起こっているの?』
心配そうな顔をさせているのが嫌になる。
でも、
「放っておいてくれ」
やっと出た言葉はそれだった。
狙われているのはおれでもベポでもない。
なまえ、お前なのだと知ったら、お前はどうする?
自分の命を投げ出そうとしてまで、白ひげたちの命を守ろうとしたお前は、きっと同じ道を選ぶのだろう。
そんな事、言える訳がない。
そんな道を、選ばせる訳にはいかない。
『でも・・・』
そんな道を選ばせる訳にはいかないんだ。
ーもう、誰にも。
「聞こえなかったのか?おれに構うな!!」
しまった、と思ったときにはもう遅かった。
しんと静まり返った部屋。
何か言葉を発しなければと思うのに、思えば思うほど、悲しいくらいに何も出てこない。
『ごめんなさい』
彼女が告げたのは、自分を責める言葉でもなく、追求でもなく、怒りでもなく、
ただ、謝罪の言葉だった。
背を向けた彼女の揺れた髪。
目に飛び込む本棚。
深く漂うコーヒーの香り。
扉の閉まる無機質な音。
ひとりきりになった空間に、こんなに心が揺らいだのは。
こんなに虚しさを覚えたのは。
自分は無力なのだと、思い知ったのは。
世界は、こんなに静かだっただろうか。
もともとひどい隈はさらに漆黒の色を増し、その風貌からは疲れきった色しか見えない。
睡眠薬を飲んだとしても、同じ結果が待ち構えているのだろう。
少しでも睡魔に襲われないように、せめてもの抵抗として、コーヒーの摂取量だけが増えていく。
“死にたくなるかもしれないがな”
あの女が告げた言葉の意味は、こういうことだったのだろう。
ことの始まりは、あの不気味な霧に包まれてからだった。
眠ってしまえばあの光景が広がる。
だからと言って拒んで起き続けていれば、身体が悲鳴をあげるのは当然のことだった。
自分が弱っているのを見計らい、襲撃に来るのではないか。
こんな状態で敵に攻め込まれれば、100%勝てる保障もない。
負けるつもりはないが、今まで経験のない事態に襲われている今、船を出すわけにはいかなかった。
これからどうするのか、
治療法はあるのか、
そもそも治るのか、
なぜ彼女を知っているのか、
なぜ彼女を狙っているのか。
考えることは山のようにある。
傷を負わされるよりも、遥かに辛い。
でも、クルーの前で、なまえの前で、 こんな姿など見せたくない。
今のローを支えるのは、船長という肩書きの責任と、見栄と、意地だった。
そして思うのだ、
おれの前ではドジばかりで、笑ってばかりいた貴方も、
おれの知らないところで、こんな思いをしていたのではないのかと。
コンコン、とノックの音が聞こえたが、今のローにはそれすらも煩わしい。
無視をしようかとも思ったが、扉の向こうから聞こえた声に、無視を決め込むことは出来なかった。
『ロー、私よ』
声の主に、重い腰を上げて、ドアを開ける。
自分の顔を見た途端に、なまえの表情は一瞬で曇った。
そんなにひどい顔をしているのだろうか、自分は。
必死に平静を保とうとするが、それすらも無意味なのだと、彼女の表情が物語っていた。
『ロー・・・もうこれ以上、黙っている訳にはいかないわ』
はっきり告げられたその言葉は、決して彼女だけの言葉ではないのだろう。
『話して、ロー。一体何が起こっているの?』
心配そうな顔をさせているのが嫌になる。
でも、
「放っておいてくれ」
やっと出た言葉はそれだった。
狙われているのはおれでもベポでもない。
なまえ、お前なのだと知ったら、お前はどうする?
自分の命を投げ出そうとしてまで、白ひげたちの命を守ろうとしたお前は、きっと同じ道を選ぶのだろう。
そんな事、言える訳がない。
そんな道を、選ばせる訳にはいかない。
『でも・・・』
そんな道を選ばせる訳にはいかないんだ。
ーもう、誰にも。
「聞こえなかったのか?おれに構うな!!」
しまった、と思ったときにはもう遅かった。
しんと静まり返った部屋。
何か言葉を発しなければと思うのに、思えば思うほど、悲しいくらいに何も出てこない。
『ごめんなさい』
彼女が告げたのは、自分を責める言葉でもなく、追求でもなく、怒りでもなく、
ただ、謝罪の言葉だった。
背を向けた彼女の揺れた髪。
目に飛び込む本棚。
深く漂うコーヒーの香り。
扉の閉まる無機質な音。
ひとりきりになった空間に、こんなに心が揺らいだのは。
こんなに虚しさを覚えたのは。
自分は無力なのだと、思い知ったのは。
世界は、こんなに静かだっただろうか。