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「これはこれは、ずいぶん手厚い歓迎のようで・・・身に余る光栄だな」

「これが歓迎してるように見えるなら、お前の頭は狂ってるとしか説明がつかねぇな」

威圧感を強めた怪しい視線と、さらに警戒を強める複数の視線がぶつかり合う。
もうすぐ日が沈む。
夕焼け空を背に、ハートの海賊団と、ひとりの女が睨み合っていた。

海賊船にひとり乗り込むなど、ただ者ではない。
ここは治安が良く、穏やかな島だった。
まさか、こんなことになろうとは。
ローを先頭に、まるで火花が散るような無言の攻防戦。
そんな中、先に口を開いたのは女だった。

「そこの白熊。先日はうちの仲間が世話になったようだな」

まだ包帯が取れていないベポを見て、女は笑う。
つまり、その言葉が意味するものは。

「てめェのところの奴が、うちのに手を出したってことだな」

「お前がいなかったらしいからな、トラファルガー。用があったのはお前だ」

「何だと・・・?」

ベポが攻撃されたのは、ローがいない腹いせだった、とでも言いたいのだろうか。
何にせよ、喧嘩を仕掛けたのはこの女たちであることは間違いがない。

「ここになまえという女がいるな」

その一言に、ローの視線が鋭くなる。
なぜ、この女が彼女の名前を出すのか。
自分を襲った女にも同じことを訊ねられたベポは、嫌な予感を感じた。


「お前に教える必要はない」

きっぱりと言い切ったローに、女の表情は変わった。

「その答えは、いると言っているようなものだ。お前たちもとんだ不運を引いたものだな」

その言葉に、さらにローの機嫌があからさまに悪化した。
わざわざ苛立ちを煽るような挑発的な言い方で、ローの怒りを誘っているのだろうか。

「消されたくないなら、そろそろ黙った方が身のためだ」

船の中には、彼女がいる。
絶対に出てくるなと言ったから、出てくることはないだろう。
この女の狙いは、
いや、この女の仲間の狙いは、ハートの海賊団ではない。

なまえだ。

「トラファルガー。あの女は神に近い人間だ。何も知らぬお前たちと共にいるべき存在ではない」

「・・・知ったことか」

マルコからの手紙で、彼女の事情を知った。
確かに自分はまだ、なまえのことをわかっていない。
まだまだ隠された真実があって、
自分たちには、手の届かない存在なのかもしれない。
そうだとしても、

「少なくとも、お前にそんなことを言われる筋合いはない」

今、彼女がここにいることを、
彼が否定する理由はどこにもない。

「そうか、残念だ」

女が手を翳したのと、ローが剣を抜いたのはほぼ同時だった。
クルーたちも、女目掛けて走り出す。

が、
それよりも早く、不気味な黒い光が、ローを包んでいた。

「キャプテンっ!!!」

ベポの叫びに、女は笑みを浮かべた。

「心配するな、死にはしない。・・・死にたくなるかもしれないがな」

得体の知れない、黒い霧に包まれたローの姿は見えない。
その異様な光景を目の前に、吹き抜けた潮風に寒気を感じたのは、きっと気のせいではない。


“私に歯向かったことを心の底から後悔するといい・・・“死の外科医”トラファルガー・ロー”


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