買い出しを終えて船に戻って来たローとなまえを迎えたのは、クルーのやけに騒がしい声だった。

何の騒ぎかと甲板に迎えば、片方はパニックになって慌てており、片方はバタバタと走り回っている。
そして何をして良いのか分からないのか、おろおろしている仲間たちの姿も見えた。

「キャ、キャプテン・・・」

真っ青になって弱々しい声を出したシャチ。
その後ろには、大量の血を流し、毛並みを真っ赤に染めているベポの姿があった。


『ロー、ベポちゃんは・・・ 』

不安と焦りで、今にも泣き出しそうな声を出すリヤ。
クルーたちも不安を隠せなかった。

「傷は塞いだ。ただ、出血がひどい。しばらくは動けねェだろうな」

急所は外していたものの、大量の出血による体力の消耗は激しく、しばらくの間は安静を強いられる状態だった。

「でも、何でベポが・・・キャプテンの首でも狙ったのか？」

ベポは“女にいきなり撃たれた”としか答えず、それ以上は何も言わなかった。
同業や賞金稼ぎならばまだ理解は出来たが、そうではなさそうだ。
部屋が荒らされているわけでもなければ、何か盗られたわけでもなく、かと言ってベポを連れ去り、人質にとるような真似もしていない。
そして、まして相手は１人で乗り込んできたというのだから驚きだ。

ベポが女1人に負けたということになるが、本当にそうなのか、能力者なのか、それとも何か別の事情でもあったのだろうか。

目的もわからない、得体の知れない人物からの襲撃に、さすがのローも心中穏やかではいられなかった。



「麦わら、白ひげ、その次は死の外科医・・・さすが、天に選ばれた女、救いの手が次々と差し伸べられるってわけか」

麦わらの一味、白ひげ海賊団、世間を騒がせる“最悪の世代”のルーキーたちなど、様々な海賊の手配書が、壁に一面に貼られた異様な部屋に、女はいた。

手元に遊ぶのは、“死の外科医”ローの手配書。

数秒睨み付けたあと、女は手配書に火をつけた。
静かに音をたてながら、ローの手配書が炎に包まれていく。

「少しは楽しませてもらわないとね」

ゆらゆら揺れる炎の中、女の瞳は怪しげに笑っていた。