伸ばしたその手は蒼き世界へ
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なまえが帰ってきた、
宴を開いて皆が盛り上がっている中、参加はしつつも、どこか緊張感にも似た、どこか気難しい雰囲気を漂わせるマルコとエースの姿があった。
そんな2人の様子に、隊長たちはうっすらと気が付いていた。
昼、襲撃した男をマルコが追ったものの、姿を見失ってしまったのだ。
あれだけの至近距離で、走って逃げた人間が空を舞うマルコから逃げ切れるなどほぼ有り得ない話。
何かの能力者か、それとも。
狙いは白ひげ海賊団か、それともなまえなのか。
意図が何なのかまったく読めない敵に、さすがの2人も心は落ち着かない。
クルーの喜びの声とは裏腹に、ふたりの心境はただ、複雑の一言だった。
数時間もすれば楽しかった宴も終わり、クルーたちは甲板で酔い潰れてぐっすりと眠ってしまっている。
すっかり静かになってしまった甲板に響いたのは、エースを呼ぶなまえの声だった。
月明かりにぼんやりと照らされる彼女のシルエットは、酔いが覚めるほどに美しく、凛々しかった。
『みんなから・・エースがずっと私を探してくれてたって聞いたの。
心配かけてごめんなさい・・そして、ありがとう』
彼女を誰よりも心配し、探し回ったのは他の誰でもないエースだった。
大切な弟から預かった責任もあったが、何よりも彼女を大切に思っていたからこそでもある。
「心配するのは当たり前のことだろ。気にするなよ」
『ありがとう・・そう言ってくれて。エースは優しいのね・・・・』
少しの間のあと、彼女は俯きながら、それと、と切り出した。
『エースの気持ちは、すごく嬉しかったわ・・ありがとう』
返ってくるのだろう。
彼女からの、返事が。
待っていたのも事実だが、反面、怖くもあった。
『エース、私は・・・
私は、あなたが望んでいるような言葉は・・きっと言えない』
その言葉は、遠回しにおれと同じ想いではないという、
彼女の言葉を選んだ精一杯の返事だと、そう悟った。
『でも・・・あなたは私のとても大切な人よ。それだけはわかって』
大切、か。
ああ、おれもお前が大事だよ。
「ああ・・それで、十分だ」
嫌われていないのならば。
それで、それだけで十分なのだと。
どこか諦めに似た、でも諦めではない感情が沸き上がった。
「でもな、なまえ。おれはまだ諦めた訳じゃねェ。いつか、おれに惚れる日がくるかもしれねェからな!」
そう言って、エースは子供のように無邪気で、太陽のような明るい笑顔を浮かべた。
そんな簡単に諦められるなら、こんなに苦労しなかった。
それほどまでに、彼女への想いが深いことに、今さらながら気付いた。
いつか振り向いてくれる日がくることを、心のどこかで望んでいる。
楽しみにしているわ、と微笑んでくれた彼女を、素直に愛しく思った。
たとえ思いが届かなくても、
こんな風に笑いあえたら、
それだけで、十分だったんだ。