「失恋・・・？」

さすがに予想外の答えだったのか、スモーカーも目を丸くする。

『は、はい・・・それで、誰もいないところに来たくて、それで・・・』

とっさの答えとはいえ、さすがにデリケートな内容に彼はそれ以上の口を挟むことはなく、納得したようだった。
ただ、ここには何もない。危険な目に合うだけだと、海軍らしくしっかりと釘を差して。

とにかく、こんなところにいつまでもいても仕方がない。
行く宛はあるのか、との問いに、なまえは首を横にふった。

「海軍の船がちょうど次の島に向かうところだ。宛がないなら乗っていけ。ここよりマシだろう」

着いてこい、と言われ、なまえはその後を着いていく。

「・・・お前みたいなのを、手放す奴もいるんだな」

『・・え？』

なまえの声に、彼が言葉を返すことはなく。
しばらく待っていると、海軍の船が見えてきた。
そして、スモーカーの姿を見た若い海兵たちは、敬礼をする。
それを横目に、彼は大声で誰かを呼んだ。
その声に、ドタドタと足音を立ててひとりの女性が船から出てきた。
まだ若い、女海兵だった。

「お呼びでしょうか、スモーカーさん・・・きゃあっ！！」

たしぎと呼ばれた女海兵は、スモーカーとなまえの前で、派手に転んだ。

『だ、大丈夫ですか？』

そのあまりの派手な転倒ぶりに驚きながらも、当の本人は膝をさすりながら大丈夫です、と笑顔で答えた。

次の島まで面倒を見てやれ、とだけ告げ、スモーカーは１人、スタスタと船に乗り込む。

よろしくお願いしますね、と言ったたしぎに、なまえは軽く頭を下げ、船に乗り込んだ。