それから数日。
モビーディック号の甲板には、せっせと洗濯物を干すなまえの姿があった。
過保護な隊長達は何もしなくて良いと言うのだが、彼女はそんなわけにはいかないと、断じて耳を貸さなかった。
働き者のなまえはナースたちからも人気となり、まるで妹のように可愛がられていた。

大量の洗濯や掃除を済ませ、コーヒーを飲んで一休みしている彼女の姿を、遠くから微笑ましく見ているのは隊長たちである。

「なまえちゃんが嫁だったら最高だよな～」

美人だし気が利くし可愛いし優しいし綺麗だし！！とサッチが力説し始める。

「おれの奥さんになってくれねぇかなぁ・・・」

ぽつりと言ったサッチに、いくつもの鋭い視線が飛んできた。

「なまえの苦労が目に見えるよい」
「間違ってもお前の嫁にはさせねぇよ」
「なまえにも選ぶ権利があるだろう」
「お前にはもったいなさすぎる」
「昼間から酔ってるのか？いいご身分だな」

「・・・・・」

凄い言われ様に、もはや言い返す気力もなくなったサッチだった。


「あの姿だけを見てると・・・呪われてるなんて信じられねぇよ」


誰にでも柔らかな笑顔を向けて、優しく微笑む彼女。
未だに信じられない。
彼らの前では常に美しいその存在が、史上最悪の悪魔の呪いに、蝕まれているなんて。


“なまえは・・・呪われてる”

そう告げたルフィの声が、エースの頭から離れずにいた。
弟のあんな弱気な声など、今まで一度も聞いたことがなかった。


どうすれば助けてやれるのだろう。
何をすれば、彼女を呪いから解き放つことが出来るのだろう。
彼女の本当の笑顔を、いつ見ることが出来るのだろう。

様々な思いを乗せて、今日も船は進んでいく。