赤々と熱風で山を包んだ炎は、街の住民たちの懸命な消火と、山特有の変わりやすい天候のおかげで降った大雨のおかげで、夜が明けるころには消し止められた。

何とか街に降りた一味のために、ファイが講師を務める学校にエミーラが話をつけ、学校の学生寮の空き部屋を、ルフィ達のために手配してくれた。
体力の消耗が激しいサンジを部屋で休ませ、ロビーに集まった一味の元に、エミーラがやって来た。

「とにかく、みんな無事で良かったわ。しばらくの間は、学生寮の空き部屋を使っていいそうよ」

「申し訳ありません、せっかく親切にしていただいたのに、こんなことになってしまって・・・・博士にも、何て謝ればよいのか・・・」

そうブルックがエミーラに謝ると、一味は俯いた。

一味の襲撃のためにクレス達は現れた。
海賊という以上、命を狙われるのは日常茶飯事とはいえ、結果的に何も関係のないエミーラやファイを自分たちのせいで巻き込んでしまったことには違いがない。
そんな中でも追い出すこともなく、冷たくあしらうこともなく、命があればいいのよ、とどこまでも優しい言葉をかけてくれるエミーラには、感謝しかなかった。

「ゾロ、あの女・・・なまえの姿をして乗り込んできたって言ってたわよね。本当にあの女なの？」

ナミの質問に、ゾロはあぁ、と短く返事を返した。

忘れもしない。
なまえの姿で、自分の身体に銃弾を撃ち込んだ女のことを。
そうなれば、少なくともクレスたちは他人に化ける力も持っているということになる。

「彼らは私たちの想像を遥かに超える術を使えるのかもしれません。魔術と一言に言っても・・・・なまえさんにかかっているのは魔術の域を超えた“呪い”です。彼らの持つ力は、不可思議なものばかりです。現に、今のサンジさんも・・・」

サンジの身を蝕む、不可思議な魔術。
なまえの心を蝕む、闇の魔術。
助かるすべはあるのか、それすらもわからない。
新たに厳しい現実を目の当たりにした一味は、困惑するしかなかった。