ある日の夕方、モビーディック号の甲板は、宴の準備で大忙しだった。
なまえが全員の前で正式にお披露目となるこの日、夕刻から始まる宴を待ちわびて、船は朝から落ち着かない様子で波に揺られていた。

白ひげが姿を現し、自席に座ると、騒がしかった甲板は一瞬の内に静かになる。

いよいよこの時が来たのだ。

1番隊隊長 マルコに連れられて姿を見せたのは、
やわらかなピンク色のロングドレスに身を包んだ、なまえだった。

その予想以上の美しさに、隊員たちは言葉も出なかった。
そう、あの隊長たちでさえも。
白ひげの前まで歩み寄ったなまえは、ドレスの裾を軽く持ち上げて一礼をした。

『改めて・・・私を助けて下さったことに、深く感謝を申し上げます。皆さまに虹の祝福が舞い降り、末永く幸多き道を歩まれますことを・・・心からお祈り申し上げます』

穏やかにそう告げた彼女の姿を懐かしむように見つめ、初めて出会った幼き日の彼女の姿と重ね合わせる。
初めてジュエル島に上陸し、その姿を見たときには、自分たちのような海賊とは絶対に縁がない生活を送るだろうと思っていた。
そうであって欲しかった。


「まさかお前が船に乗るとは・・・人生、何があるかわからないもんだ・・・」

わかりきっている未来など、この船の人間はきっと誰も望まない。
目の前の彼女が、この運命を結び付けた。

「これも何かの縁・・・なまえ、お前は今日から俺の娘だ」

《白ひげ海賊団に入る》
それは家族になるということ。
血の繋がりはなくても、強い絆で結ばれている白ひげ海賊団の、白ひげの娘になるという意味を持っていた。

『ありがとう、・・・パパ』

なまえの言葉に、白ひげの表情が変わる。
“親父”と呼ばれることはあっても、そう呼ばれることはなかった。
世界最強の男の眼は、ひどく穏やかになった。

「グララララ！息子もいいが、娘は格別にいいもんだ！！」

２人の会話に、仲間たちは目を輝かせた。


「野郎共！！愛娘に乾杯だ！！」


それは、白ひげ海賊団の新しい歴史が始まった瞬間だった。