レッシュ島―

学者の島と呼ばれるその大きな島は、どこか神秘的なオーラを放っていた。
人目につかない海岸にサニー号を停泊させた一味は、山を登っていた。
町の住民からの聞き込みで、ファイが山に研究所を構え、住んでいることを突き止めたのだ。
すぐに情報が入ったのはありがたいことだったが、距離的にはかなりの遠さだった。
これまた面倒な場所に・・・とウソップが呟くのも無理はない、辿り着くまでに相当な時間がかかるであろうことは、容易に想像がつく。
おまけにこの島の気候は暑く、太陽がぎらぎらと輝く中の登山は、言い表せないほどのきつさがあった。

登り始めてどれぐらい経っただろうか、おーい！と呼びかける声に気付いたルフィが、足を止める。
歳はルフィと同じくらいだろうか。馬に乗った青年が、もしかしてエミーラさんのところに行くのか？と訊ねた。
しかし、エミーラと言われても誰だかわからない。
ファイ博士のところへ向かっている、とナミが答えると、青年はエミーラとはファイ博士の奥さんであることを教えてくれた。
立派な３頭の馬が引く荷台を指差し、良かったら乗っていけよ、と言ってくれたのだ。

ありがたく乗せてもらいましょう、とロビンが言うと、重ね重ね運が良いと喜びの声をあげて、ルフィ達は荷台に乗り込んだ。
助かりましたね、と喜ぶブルックに、暑さでくたくたのチョッパーはぐったりしながらも安心したように笑顔を浮かべた。

ルフィが笑って礼を言うと、答えるように馬が泣いた。
青年はロットと名乗った。
レッシュ島の宅配人をしているらしい。
宅配人とは、食材や生活に必要なものを街から離れた場所に住む人たちに宅配する仕事をする人のことを指すらしく、街ではロットのように、荷台を引いた馬たちを連れた人たちをちらほら見かけていた。
ファイとエミーラの家は街から一番遠いため、いつも馬を３頭連れて山を登るらしい。

自分たちが乗ってしまって大丈夫なのかと、サンジが心配の声を上げる。
いくら何でも、いきなり９人も乗ったら、馬たちも負担になるのは間違いない。
気遣う様子を見せるサンジに、秋の収穫祭の時には、大量の米を乗せて何往復もすることや、宅配人の馬はちゃんと鍛えており、ちょっとやそっとじゃバテないと、心配を吹き飛ばすような答えを返した。

お前すごいなー！とルフィが馬を撫でると、馬はまた嬉しそうに鳴いた。

これで早く着けるわ、と安堵の声をあげたナミ。
本当に、思わぬ幸運に遭遇した。
青年と海賊たちを乗せた立派な馬たちは、颯爽と山を駆けていった。