伸ばしたその手は蒼き世界へ
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「なまえちゃ~ん」
ある日のモビー・ディック号。
甲板でひとり、のんびり曲を作っていたなまえを呼んだのはサッチだった。
「おやつあるぜ!サッチ様特製だ!」
本当?とにこりと笑ったなまえに、サッチはデレデレと鼻の下を伸ばし、エース達に見つかる前にキッチンに来いとさりげなく彼女の手を引いて、キッチンへと向かった。
テーブルには色鮮やかなベリーケーキと、コーヒーが並んでいた。
『きれいなベリーね』
「前の島で採ってきたんだ、甘くて美味いぜ?」
食べてみろと急かすサッチの言葉に乗り、素直に一口食べるなまえ。
ベリーの上品な味が広がった。
『美味しいわ』
「本当か?じゃあなまえちゃん、俺にもあーんしてくれよ」
「何やってんだよい」
口を開けて、なまえに食べさせてもらおうと企んだサッチだったが、思わぬ来訪者に青ざめる。
どうしたマルコ?と白々しく言ってはみるものの、マルコの冷ややかな視線が突き刺さる。
「それはこっちのセリフだい、何やってんだよい」
「何って、なまえちゃんとおやつだよ、おやつ!」
見てわかるだろ?と半ば開き直るサッチに、マルコはさらに冷ややかな視線を送った。
「それで、どさくさに紛れて食べさせてもらおうって算段かよい?」
サッチの下心は、ばっちりと見透かされていたらしい。
別にいいだろ、ちょっとぐらい!とさらに開き直るサッチに、マルコは呆れ顔しか出来ない。
そんなふたりのやりとりに、なまえは笑った。
『サッチ、ありがとう。とても美味しいわ』
「ほら、なまえちゃんだってこう言ってるからいいんだよ!」
勝ち誇ったような顔のサッチに、ため息をつくマルコはもはや言い返す気も失せたようだった。
『ふふ、あの人も、いつもそうやって……』
言いかけて、なまえははっとした。
“あの人”
私は今、確かにそう言った。
だけど・・・
誰のこと?
“なまえちゃん”
“なまえちゃんの為に、この・・・が愛を込めて作ったよぉぉ!!!”
“なまえちゃんに喜んでもらえるなんて幸せだ!”
あなたは、誰?
前々から、不思議には思っていた。
やっぱり何かが、欠けている。
記憶が、飛んでいる。
『マルコ、サッチ・・・・』
急に黙ってしまった彼女に、2人は顔を見合わせる。
『私、白ひげ海賊団に来る前・・・何処にいたの?』
「「・・・・!!」」
『私、何をしてた・・・?』
「それは・・・」
言えない。
『たまに・・・誰かの姿が、みんなと重なる時があるの。でも、それが誰なのかわからない』
彼女の言葉に、マルコとサッチは言葉を失う。
『不思議には思ってた。何だか記憶が曖昧なのは、気のせいじゃないのね・・・。私は一体、どこで何をしてたの?マルコもサッチも、本当は何か知ってるんでしょう・・・?』
その質問に、何も答えられない。
彼女に真実を告げるには、あまりにも状況が悪すぎる。
言えるわけがない。
―呪われているだなんて。
黙ってしまったふたりを見て、なまえは悲しそうな表情を浮かべた。
『ふたりが教えてくれないなら、きっと誰に訊いても、教えてはくれないのね・・・』
「なまえちゃん、それは・・・」
言いかけたサッチの言葉を切るように、なまえは首を横に振った。
『訊いた私が悪かったわ・・・ごめんなさい』
そう言うと、なまえはキッチンを出ていった。
彼女の脳裏に過っているのは、
麦わらの一味にいた時の記憶。
間違いなく、それしか考えられない。
魔術によって封印された、麦わらの一味として歩んだ、時間の記憶。
真実を今教えるには、無理がある。
敵だと、憎むべき極悪人だと、そう刻まれてしまった麦わらの一味の存在。
仲間として、楽しい日々を送っていたことすら書き換えられてしまった彼女に、なんと答えればいいと言うのか。
どうにも出来ないのが、ひどく情けない。
どうすればいいのかわからない。
それしか言えない。
己の無力さを責めることが、今のふたりには精一杯だった。
ある日のモビー・ディック号。
甲板でひとり、のんびり曲を作っていたなまえを呼んだのはサッチだった。
「おやつあるぜ!サッチ様特製だ!」
本当?とにこりと笑ったなまえに、サッチはデレデレと鼻の下を伸ばし、エース達に見つかる前にキッチンに来いとさりげなく彼女の手を引いて、キッチンへと向かった。
テーブルには色鮮やかなベリーケーキと、コーヒーが並んでいた。
『きれいなベリーね』
「前の島で採ってきたんだ、甘くて美味いぜ?」
食べてみろと急かすサッチの言葉に乗り、素直に一口食べるなまえ。
ベリーの上品な味が広がった。
『美味しいわ』
「本当か?じゃあなまえちゃん、俺にもあーんしてくれよ」
「何やってんだよい」
口を開けて、なまえに食べさせてもらおうと企んだサッチだったが、思わぬ来訪者に青ざめる。
どうしたマルコ?と白々しく言ってはみるものの、マルコの冷ややかな視線が突き刺さる。
「それはこっちのセリフだい、何やってんだよい」
「何って、なまえちゃんとおやつだよ、おやつ!」
見てわかるだろ?と半ば開き直るサッチに、マルコはさらに冷ややかな視線を送った。
「それで、どさくさに紛れて食べさせてもらおうって算段かよい?」
サッチの下心は、ばっちりと見透かされていたらしい。
別にいいだろ、ちょっとぐらい!とさらに開き直るサッチに、マルコは呆れ顔しか出来ない。
そんなふたりのやりとりに、なまえは笑った。
『サッチ、ありがとう。とても美味しいわ』
「ほら、なまえちゃんだってこう言ってるからいいんだよ!」
勝ち誇ったような顔のサッチに、ため息をつくマルコはもはや言い返す気も失せたようだった。
『ふふ、あの人も、いつもそうやって……』
言いかけて、なまえははっとした。
“あの人”
私は今、確かにそう言った。
だけど・・・
誰のこと?
“なまえちゃん”
“なまえちゃんの為に、この・・・が愛を込めて作ったよぉぉ!!!”
“なまえちゃんに喜んでもらえるなんて幸せだ!”
あなたは、誰?
前々から、不思議には思っていた。
やっぱり何かが、欠けている。
記憶が、飛んでいる。
『マルコ、サッチ・・・・』
急に黙ってしまった彼女に、2人は顔を見合わせる。
『私、白ひげ海賊団に来る前・・・何処にいたの?』
「「・・・・!!」」
『私、何をしてた・・・?』
「それは・・・」
言えない。
『たまに・・・誰かの姿が、みんなと重なる時があるの。でも、それが誰なのかわからない』
彼女の言葉に、マルコとサッチは言葉を失う。
『不思議には思ってた。何だか記憶が曖昧なのは、気のせいじゃないのね・・・。私は一体、どこで何をしてたの?マルコもサッチも、本当は何か知ってるんでしょう・・・?』
その質問に、何も答えられない。
彼女に真実を告げるには、あまりにも状況が悪すぎる。
言えるわけがない。
―呪われているだなんて。
黙ってしまったふたりを見て、なまえは悲しそうな表情を浮かべた。
『ふたりが教えてくれないなら、きっと誰に訊いても、教えてはくれないのね・・・』
「なまえちゃん、それは・・・」
言いかけたサッチの言葉を切るように、なまえは首を横に振った。
『訊いた私が悪かったわ・・・ごめんなさい』
そう言うと、なまえはキッチンを出ていった。
彼女の脳裏に過っているのは、
麦わらの一味にいた時の記憶。
間違いなく、それしか考えられない。
魔術によって封印された、麦わらの一味として歩んだ、時間の記憶。
真実を今教えるには、無理がある。
敵だと、憎むべき極悪人だと、そう刻まれてしまった麦わらの一味の存在。
仲間として、楽しい日々を送っていたことすら書き換えられてしまった彼女に、なんと答えればいいと言うのか。
どうにも出来ないのが、ひどく情けない。
どうすればいいのかわからない。
それしか言えない。
己の無力さを責めることが、今のふたりには精一杯だった。