伸ばしたその手は蒼き世界へ
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ただただ目の前の光景が信じられず、サンジの頭はますます混乱する一方だった。
なぜ、彼女がここにいるのだろうか?
彼女は白ひげ海賊団にいるはずなのに。
どうやってここまで来たのだろうか?
いろいろな疑問が次々と頭の中に浮かび上がるものの、頭がぼんやりと重たく、回転しない。
それどころか、寝起きのせいか身体もだるく、思うように動かない。
「夢か・・・?」
目の前で起きている状況をすべて一言で片付けることが出来る結論をぽつりと呟いたが、それを否定したのは彼女だった。
『夢じゃないわ・・・』
なまえのほっそりとした白い指が、サンジの金髪を優しく梳く。
その指は思わず反射的に身じろぎするほど、冷たかった。
「何でそんなに冷たいんだい・・?」
異常なほどに冷えたその指は、まるで氷のようだった。
『寒いの・・・』
一言そう告げると、なまえは悲しげな瞳でサンジを見つめた。
久しぶりに会えたというのに、
君のそんな顔は、見たくない。
「なまえちゃん、こっちにおいで・・」
サンジは身体を起こすと、自分の言葉に素直に従って近づいたなまえの肩に、自分が着ていたジャケットを脱いで掛けると、なまえはそっとサンジの肩にもたれかかった。
もう、夢でも、何でもよかった。
「元気だったか?なまえちゃん・・・」
素直に自分に寄りかかり、小さく頷いた彼女がとても可愛らしく思えた。
甘い香りが漂う彼女のピーチブラウンの髪をそっと優しく梳くと、さらさらと指の間を流れていくその感触がとても心地よかった。
なまえは嫌がる素振りをかけらも見せない。
こんな事、絶対に有り得ないと思っていた。
折れそうなほど細い腰に手を回し、控えめに抱き寄せた。
どうやってここまで来たのかと問うと、マルコに連れてきてもらったのだという。
マルコは通称”不死鳥マルコ”。
空を飛べるのならば、成し得る業だ。
『ねぇサンジ君・・・このままずっと、あなたの側にいてもいい・・・?』
控え目な、だけど甘えるようななまえの問い掛けに、拒絶などするはずがない。
そしてそれは、彼にとっては願ってもみなかった言葉だ。
もちろん、と答えると、なまえは嬉しい、と告げて彼の広い背中にするりと腕が回した。
それだけで、もう十分だった。
優しく抱きしめ返した彼女の身体は、柔らかくて、儚かった。
守りたかった、守れなかった存在が、今、自分の腕の中にいる。
それ以上は何もいらない、何も考えたくもない。
これは夢か、現実なのか。
未だに迷うような時間が流れていた。
夢なら、どうか覚めないでほしい。
そんな願いの中で、しばらくの間、冷たく柔らかい身体を抱きしめていた。