何が目的だと詰め寄る男たちに、これ以上事を荒立てないように冷静な言葉で大人の対応をしたのは、考古学者のロビンだった。

「私たち、さっきこの島についたばかりで。彼女の歌が聞こえてきたから、声を辿ってここに来たの。驚かせてごめんなさいね」

本当につい先ほど上陸したばかりで、立ち入り禁止の場所だということを知らなかったこと。
そして驚かせてしまったことを素直に詫び、すぐに移動する姿勢を見せると、その反応が予想外だったのか、さっきまで向けられていた警戒の色がわずかに緩んだ。

「すまないね、こちらも早まってしまったようじゃ、旅のお方」

マーサと呼ばれた御婆が、ルフィ達を“海賊”ではなく、“旅の方”と呼んだのは、間違いなくその証拠だろう。


明日、一年に一度の祭りが開かれること。
この近くにこの島の守り神が舞い降りると言われている場所があり、そこが祭りの会場になっていること。

準備のため、一部の人間以外の一切の立ち入りを禁じているということを親切に教えてくれた。

マーサと名乗った御婆は、ジュエル島の長老だった。

そしてなまえと呼ばれた女は、長老マーサの孫娘だった。
彼女はその美しい声から、島の人々からは“歌姫”と呼ばれていること、
明日の祭りで、神に祈りを捧げるための歌と舞いを練習していたのだという。

祭り事が大好きなルフィが、これに黙っているはずがない。
その祭りに参加しても良いかと、いきなりマーサに申し出たのだ。
こんな状況の中で図々しいにも程がある発言に慌てたナミが、何を言っているのかとルフィを怒るが、本人は至って真面目だった。
誰もが当然却下されると思っていたが、返ってきた言葉は、意外なものだった。

『どうぞ、ご参加ください』

参加を承諾したのは、なまえだった。

なまえ様、と咎めるような男たちの声に、彼女はルフィの目をしっかりと見据えて言葉を続けた。

『海賊とは名乗っていても、この方々は悪いようには見えません。もし本当の悪人ならば・・・虹神の裁きを受けることでしょう』

彼女の言葉に、マーサも確かに、と小さく頷いて同意を示した。

「なまえ、案内も兼ねて、町まで彼らを送ってあげなさい」

はい、と返事を返したなまえには、先程までの警戒の色はまったく消えていた。
ご案内しますね、と優しく一味に微笑んでくれたその笑顔はt天使のように清らかだった。