「なまえ！どうしたんだよ、落ち着いて！」

『離して！あなた、麦わらの一味ね！？』

何が何だかわからず慌てるチョッパーを横目に、なまえはベッドから飛び起きる。

『カイルは？彼はどこ！？』

「なまえ、大丈夫だから落ち着いてくれ！！」

本棚から崩れ落ちた本が、バサバサと床に叩きつけられる。

「何の騒ぎだ！どうしたチョッパー！？」

いち早く異変に気付いたゾロが、医務室へ駆け込んできた。

彼の目に飛び込んできたものは、血相を変えて暴れるなまえと、そんな彼女を必死に止めるチョッパーの姿だった。

「なまえ！？」

そんなゾロの姿を見たなまえは、顔を真っ青にした。

『海賊狩り・・・！！』

それは、かつて仲間に向けられていた表情ではなく。
恐ろしいものを目の当たりにした、恐怖の表情だった。

「ゾロ、なまえを止めてくれ!!」

この状況が理解できない。
何が何だか分からない。
とりあえず、チョッパーの言う通りになまえを止めようとするが、彼女はものすごい表情でゾロを睨み付けた。

『気安く触らないで！』

ゾロの腕を振り払い、優しく穏やかな彼女からは考えられないような言葉が放たれた。

そんな騒ぎに目を覚ました仲間たちが、次々に医務室へと駆け込んでくる。


『彼の言う通り・・揃いも揃って、私を利用するつもりなのね！』

いつも優しかったなまえの豹変ぶりに、動揺する一味。

『海賊に・・・極悪人にこの力を利用されるぐらいなら・・この力で、この船ごと沈めてあげるわ！』

そう言うと、彼女は置いてあった扇を掴んだ。

『覚悟なさい、海賊！！』

歌姫を蝕む呪いは、一味が予想していた以上に、ひどく残酷なものだった。