かざした右手に、重々しい黒い光が集まり始める。
その不気味な光景に、誰もが瞬時に危機感を覚えた。

そんな一味の目の前に現れたのはー

海軍大将3人、CP9、七武海の名を連ねる者。
かつて一味が立ち向かい戦った、強者たちの姿だった。

「落ち着け！こいつらがここにいるはずがねェ！」

急に目の前に現れたことで、明らかに動揺の色を濃くする仲間たち。
その不安を払拭するかのように、ゾロが強く言い放った。

全員わかってはいるのだ、彼らがここにいるはずがないことを。
頭では理解しているからこそ、混乱している。

“いないはずの人間が何故、今、目の前にいるのか？”

存在しないはずの人間が、目の前に存在している。
あり得ないことが起こっている。
その「事実」が、恐怖なのだ。

『海賊という極悪人はいなくなるべきなのよ。・・・この世から。何も悪いことをしていない、ただ生きているだけの私たちから、何もかも奪うの』

なまえが扇を構えた時、カイルが怪しく笑った。
まるでこの状況を待っていたかのような、満足気なその表情は、悪い未来を予想させるには十分だった。

「なまえの言う通りだ。何もかも奪われる側に・・・一度ぐらいはなってみろ」

彼も、自身の人生を他人に狂わせられた、被害者なのだ。
だからこそ願った、誰にも負けない力を。
どうしても欲しかった、その強さを。
それが今、叶おうとしている。
なまえという存在で、彼の描いたすべてのシナリオが完成し、
やっと幕を開けようとしている。

かつて戦った強者たち、
復讐の炎の物語の先導者、
そして、神に愛された、清き力を持った者。


麦わらの一味に立ちはだかった壁は、
あまりにも大きかった。


『この者たち、虹神の裁きを受けるべし』