それは余裕の証か、それとも宣戦布告の証か。

目的の場所へとたどり着いたルフィ達の目に飛び込んできたのは、玉座に座って優雅にワイングラスを傾ける男の姿だった。
ルフィやゾロよりは上だが、歳はまだ若い。

「なまえを攫ったのはお前か？」

そう問いかけたルフィの顔をまじまじと見て、男は眉をひそめた。

「攫った・・・？」

そのワードが気に入らなかったのか、心外だな、と一言呟いてワインを飲むその姿からは、何を考えているのかがいまいち読めない。
麦わらの一味を目の前にしても、顔色ひとつ変えることがない。

「しかし・・・世界政府に宣戦布告。無法者の極みである七武海を倒し・・・挙句に天竜人を殴り飛ばす。こりゃあ政府が放っておくわけがないよな・・・」

数々の事件を引き起こしてきた麦わらの一味は、今やその名を世界中に轟かせることとなった。
多くの人間が、良くも悪くも興味を持つ存在でもある。

「なまえを取り返しに来たんだろ？会わせてやるよ」

意外にもあっさりとした返答に、逆に警戒の色を強める。
話が早いと言えばそれまでなのだが、攫っておいてこんなにすんなりと事が進むわけがない。

「その前に・・・俺からひとつ質問だ、黒足」

思いがけない指名に、サンジは鋭い視線を向けた。

「なまえは、お前の飯を食ってたか？」

それは、少なくともこの場では予想外の質問だった。

「それを今答える必要があるのか？」

まったく意図の読めない質問に、サンジはさらに眉をひそめた。

「だから質問してるんだろ？」

「・・・お前に教える義理はねェ」

答えを返すことなく冷たく突き放すサンジに、そうか、と至極残念そうな声と、諦めの色を含んだため息をついた。

「お前、何を企んでんだ？」

「人聞きが悪いな。素直に喜んだらどうだ？俺は遠路はるばるやって来たお前たちに、最大限の敬意を表しているつもりなんだが」

ゾロの厳しい追及に対しても、男はまったく興味がなさそうな顔で言葉を返した。

「改めて歓迎するぜ、麦わらの一味。俺の名はカイル」

以後お見知りおきを、と優雅に礼をすると、残っていたワインを一気に飲み干し、グラスを置いて立ち上がった。

「なまえ、お前に客だ」

静かな城内に、なまえを呼ぶ声が響き渡った。